現在、クライアントから最も多く寄せられる質問の一つが人工知能に関するものだ:どこから始めるべきか?データから始めるべきか、それともプロセスの再発明から始めるべきか?
これは典型的なニワトリと卵の問題であり、同様の多くの問いと同じく、答えはどちらか一方ではない。両方だ。しかし、その順序と意図が非常に重要である。この1年間、私は多くの企業がAIに多額の投資をしているのを目にしてきたが、あまりにも多くの企業がこの順序を間違えている。
なぜデータ優先アプローチでは不十分なのか
データから始めるという論理は反論の余地がないように思える。クリーンでアクセス可能なデータがなければ、AIは効果的に機能できない。すべての経営者は「ゴミを入れればゴミが出る」という格言を知っている。そのため、多くの組織は野心的なデータイニシアチブを立ち上げることから始める。
彼らはレガシーデータをクリーンアップし、アプリケーションをクラウドに移行し、デジタルコアを近代化し、データプラットフォームとガバナンスフレームワークに投資する。これらは重要かつ必要なステップだ。しかし、良質なデータは不可欠ではあるが、それだけでは十分ではない。見落とされがちなのは、データ作業だけでは意味のあるROIを生み出さないということだ。それは目的地ではなく、基盤に過ぎない。
私は企業がデータインフラの完成に時間を費やし、最終的にAIツールを展開したときに、その利益が良くても増分的なものに留まるのを目にしてきた。彼らは、どんなに洗練された技術であっても、それ自体が変革を推進するという誤った前提を持っている。しかし、ビジネスの運営方法を再考しなければ、技術は現状を強化するだけだ。
真のROIは運用モデルの再発明から生まれる
エベレストグループでは、企業がAIを含む新興技術からどのように価値を実現しているかを研究してきた。私たちが発見したのは、真の価値は技術だけからではなく、それを取り巻く運用モデルの変革から生まれるということだ。
その変革は深遠だ。通常、チームの再編成、役割の再定義、意思決定構造の変更、AIが提供できるインテリジェンスと自動化を十分に活用するためのプロセスの再設計が必要となる。
従業員の働き方を変えずにAIツールを与えても、支払った分のパフォーマンスは得られない。ツールには能力があっても、それが活躍できる環境が変わっていないのだ。
AIからROIを獲得するためには、企業はまずAIの能力を活用する新しい運用方法を設計する必要がある。そうして初めて、どのデータが重要か、どのプラットフォームを再構築する必要があるか、どこに投資すれば最大のリターンが得られるかを特定できる。
ビジョンから始め、そこから逆算する
目的地を定義することから始めよう。AIがビジネスに完全に組み込まれたとき、あなたの将来の運用モデルはどのようなものになるだろうか?
これは単なる思考実験ではない。「規模でのAI」があなたの組織にとって何を意味するのかについて、具体的で証拠に基づいたビジョンを構築することだ。これには、プロセスがどのように変化するかだけでなく、ビジネスモデル、人材、ガバナンス、価値提供がどのように進化するかを想像する未来予測が必要だ。
その将来のビジョンを構築したら、現在に逆算して、それを達成するために必要なデータ、プラットフォーム、技術インフラを特定すべきだ。
この未来優先アプローチにはいくつかの利点がある。データ戦略が目的を持ち、的を絞ったものになることを保証する。最も重要な再プラットフォーム化作業に優先順位をつけることができる。そして、各投資が特定のビジネス成果に直接リンクできるため、ROIを評価するためのフレームワークを提供する。
実行システムの構築
明確なビジョンがあっても、実行は容易ではない。AIベースの運用モデルへの移行には、私たちが「実行システム」と呼ぶもの、つまり技術、データ、プロセス、人材の協調的な再設計が含まれる。
これは大変な作業だ。データアーキテクチャ、クラウド移行、AIエンジニアリング、組織再設計に多大な投資が必要になるだろう。新しいスキルを構築または獲得する必要がある。そして組織のあらゆるレベルで変化を管理する必要がある。これについては、私の最近のブログ「なぜAIの価値を十分に捉えるのに苦戦しているのか?」でさらに詳しく学ぶことができる。
順序を間違えるという罠
組織がデータから始めるのは、それが具体的に感じられるからだ。範囲を決めやすく、測定しやすく、生産的に感じられる。しかし、そうすることで、彼らは本末転倒のリスクを冒している。
AIが駆動する未来がどのようなものかという明確な絵を最初に持っていなければ、そこに到達するために必要なデータを知ることは不可能だ。結果として、将来の運用モデルをサポートしないデータのクリーンアップや移行に何百万ドルも費やす可能性がある。
これは一般的で高くつく間違いだ。企業は、善意からではあるが、戦略的価値をほとんど生み出さないデータイニシアチブに予算を使い果たす。さらに悪いことに、彼らはAI全体に幻滅し、技術が「単に成果を出さない」と結論づける。
しかし問題はAIではなく、その旅を導くビジョンの欠如だ。
ほとんどの組織が苦戦しているのは驚くべきことではない。AIベースの運用モデルへの移行は未知の領域だ。これらの新しいモデルで規模を持って運営している企業はほとんどなく、多くはまだ「良い」とは何かを理解しようとしている段階だ。
その結果、彼らは予測可能な罠に陥る。単に従業員にAIツールを与えれば生産性が向上すると想定する。それらのワークフローを再考することなく、既存のワークフローにAIを統合する。あるいは、AIを新しいビジネスモデルの基本的な実現要因ではなく、アドオンとして扱う。
すべてをまとめる
では、データについてなのか、それともプロセスの再発明についてなのか?答えは両方だが、正しい操作順序が必要だ。
AIを活用した未来のビジョンから始めよう。構築したい新しい運用モデルを定義する。そしてそのビジョンを実現するために、データ、技術、人材戦略を調整する。
データから始めると、方向性なしに構築するリスクがある。再発明から始めれば、目的を生み出す。そして両方が調和して機能すれば、AIの真の約束、つまり単なる漸進的な改善ではなく、変革的な価値のための舞台を整えることができる。



