ダンカン・ギリスはTERREPOWER（旧BBB Industries）のCEOである。
欧州は企業のサステナビリティにおいて世界のリーダーとして正当に評価されている。
EUは「最初の気候中立大陸になる」という明確な目標を掲げている。欧州委員会が承認した政策イニシアチブのグループである欧州グリーンディールは、2030年までに排出量を少なくとも50%削減することを目指している。これは法的に、2050年までに「温室効果ガスの排出量が実質ゼロの経済」である気候中立性を達成するというEUのコミットメントを正式なものとしている。グリーンディールの一環として、企業サステナビリティ報告指令（CSRD）は現在、一定規模以上の企業に対して、より厳格なサステナビリティ報告基準を満たすことを義務付けている。
欧州は世界の他の地域の手本となっているが、まだ正しい方向に至っていない。そしてEUが正しくできないのであれば、他の地域がどうしてより良くできるだろうか？
企業のサステナビリティへの貢献を測定する現在のアプローチは、炭素排出の回避を十分に考慮していない。企業が大気中の炭素排出や廃棄物中の材料を削減するだけでなく、回避することが重要である。
しかし、サステナビリティに関する標準的な企業フレームワークはスコープ1、スコープ2、スコープ3の排出量に基づいており、企業のバリューチェーン全体の温室効果ガスを測定している。
• スコープ1：企業が所有または管理する排出源から発生する「直接」排出量。
• スコープ2：企業が購入するエネルギーの生産から発生する「間接」排出量。
• スコープ3：企業のサプライヤー、パートナー、ベンダーによって生産される「間接」排出量。
このモデルは、真の循環型経済の構築に貢献する実践に対して報酬を与えず、実際にはペナルティを課している。再製造による排出回避に十分な評価を与えないことは、より効果的な持続可能な実践を妨げている。グローバルなサステナビリティ目標を達成し、将来世代のために環境を保護するためには、これらの限定的な指標だけでは満足できない。
私たちは、「回避された排出量」を測定し、環境被害を増やさない組織を評価する第4のスコープを検討する必要がある。スコープ4の排出量は、従来の製品と比較して環境に優しい製品を使用することの積極的な影響と、効率的な再利用と持続可能な製造を通じて防止された排出量を強調するだろう。
排出削減から排出回避へのシフト
当社は自動車および産業部門の企業と協力して、生産プロセス全体にわたって持続可能な製造を推進している。私たちの目標は、既存の材料や製品を改修・再製造し、そのライフサイクルをできるだけ長く延ばすことである。
私たちは使用済み機器を引き取り、新品と同等かそれ以上に修理する。新しい太陽光パネル、オルタネーター、ターボチャージャー、燃料システムを製造する代わりに、古い部品に新しい命を吹き込む。地中から鉱物を採掘したり、部品を作るためにエネルギーを使用したり、古い機器を埋め立て地として地中に送ったりすることを回避している。
社内データによると、当社は毎年カーボンニュートラルを達成しているが、現在のサステナビリティフレームワークは排出回避行動を一切認めていない。大企業はこのアプローチでカーボンニュートラルを達成するために、排出量を削減したりビジネスモデルを変更したりする必要はない。彼らは地球から鉱物を採掘し、温室効果ガスと廃棄物を生成する新製品を製造し、最終的にはライフサイクルの終わりに廃棄される。そして、カーボンオフセットを購入し、「持続可能」というステータスを維持できる。
私たちはバリューチェーンのあらゆる側面で真のサステナビリティを優先するフレームワークが必要である。企業は、製品を再製造してその有用性を延長することで、最初から排出と廃棄物を回避したことを認められ、報われるべきである。天然ガスを使用し、3メートルトンの排出量を排出する工場が、さらに3メートルトンの追加排出を大気中に放出することを回避する製品も製造している場合、それはゼロとして相殺されるべきである。現在の計算方法では3プラス3は6になるが、本来は3マイナス3でゼロになるべきである。
このモデルの価値提案は明確で合理的であり、サステナビリティ目標とは関係がない。これは純粋な資本主義である。当初、私たちは純粋に経済的理由から持続可能な製造を採用した。しかし前進するにつれて、他の重要な利点が明らかになる。企業がオリジナルと同様に機能する修理部品を大幅なコスト削減で提供できれば、企業、顧客、株主、そして環境、すべてが勝者となる。
航空宇宙や医療機器産業など、高価値コンポーネントに依存するセクターは、すでにこの戦略を先駆的に実施している。企業は、寿命が近づいた主要コンポーネントを廃棄して新しい部品に交換するのではなく、修理して再利用することを選択している。再製造は新規生産のコストのほんの一部であり、ビジネス的にも環境的にも理にかなっている。消費財や電子機器を含む他の産業もこのモデルに理想的に位置付けられているが、変化は難しい。
あらゆる産業の企業は、持続可能な製造アプローチへの移行において、重大な技術的、物流的、品質的課題に直面している。機器の所有者は、修理のために返送する経済的インセンティブを持つ必要がある。また、パートナーが正しいコンポーネントを交換し、新品同様にテストする技術的能力を持っていることを知る必要がある。「これは新品ではなく中古品だ。正しく機能するかどうかわからない」と言う自然な傾向がある。彼らはテストが完璧で、再製造された機器の品質が申し分ないという保証が必要である。
今日の企業は、システムをより良く機能させるインセンティブを本当には持っていないサステナビリティ産業複合体の中で運営されている。システムは十分に機能しているので、リーダーたちは小さな改善で満足している。それは悪いことではないが、私は大規模な実質的な変化を見たい。リーダーたちは業界団体を通じて排出回避のサステナビリティ基準について合意し、規制当局にこれらの基準をより広く採用するよう説得するために協力する必要がある。
サステナビリティは1つの企業や1つの地域よりもはるかに大きなものである。これは産業に関するものだ。これは私たちの経済を動かすために必要なものを作る方法に関するものだ。企業がオフセットで行っていることと同等の方法で排出回避に対して明示的なクレジットを与えられれば、持続可能な製造は爆発的に広がる可能性がある。企業ごと、産業ごとに、再製造をバリューチェーンに組み込み、サステナビリティ戦略におけるスコープ4排出量の重要性を認識することで、欧州が先導するかどうかにかかわらず、この変化の最前線に立つことができる。
