米首都ワシントンで26日に州兵2人が撃たれ、重体となっている事件で、容疑者はアフガニスタン戦争中に米国と協力関係にあり、米中央情報局(CIA)の任務も担っていたアフガン人の男と特定された。男はバイデン政権下の再定住プログラムにより2021年9月に米国へ移住し、今年4月にトランプ政権下で難民申請(Asylum。米国内到着後の庇護申請)が承認されていた。
捜査当局は容疑者の身元について、米北西部ワシントン州ベリンガムに住むアフガニスタン国籍のラフマヌラ・ラカンワル(29)と特定した。
CIAのジョン・ラトクリフ長官は27日、ラカンワルがアフガニスタンでCIAの支援を受けた軍部隊と協力していたことを明らかにした。
ドナルド・トランプ大統領は26日夜、国土安全保障省が「拘束された容疑者は、地上の地獄であるアフガニスタンからわが国に入国した外国人だと確信している」とした上で、容疑者は「2021年9月にバイデン政権によって」米国に連れてこられたと主張。「在留資格はバイデン大統領が署名した法律によって延長された」と述べた。
これは、特定の事情のあるアフガン人亡命希望者に2年間の米国滞在を認めた「同盟国歓迎作戦」を指していると思われる。
クリスティ・ノーム国土安全保障長官は、X(旧ツイッター)への投稿でトランプの見解を改めて強調し、ラカンワルは「同盟国歓迎作戦の下で審査も受けず米国に集団で臨時入国を認められた多くのアフガニスタン人の一人」だと主張した。
アフガンでは「死の部隊」に所属
米NBCの報道によると、ラカンワルはアフガン軍に勤務し、米軍特殊部隊の兵士たちとともに10年間にわたり活動していた。親族の話によれば、ラカンワルはアフガン第2の都市カンダハルの基地に駐屯していたという。親族はラカンワルがこのような事件を起こしたとは信じられないと述べ、「アフガニスタンでは私たちこそがタリバンの標的だった」と付け加えた。
ラカンワルはパキスタンと国境を接するアフガン東部ホスト州で育ったとされる。米国移住後はワシントン州ベリンガムで妻と5人の子どもと暮らしていた。
米紙ニューヨーク・タイムズは、ラカンワルがCIAと連携した準軍事組織「ゼロ部隊(Zero Unit)」の一員だったと報じた。米軍の作戦において夜間襲撃や秘密工作を担っていたゼロ部隊は、その残虐ぶりで悪名を轟かせ、人権団体からは「死の部隊」と非難されていた。同紙は幼なじみの話として、ラカンワルは「精神的な問題を抱えており、自分の所属部隊がもたらした死傷者の数に心を痛めていた」と伝えている。
今年4月に難民認定
バイデン政権下の「同盟国歓迎作戦」は、アフガン戦争中に米国を支援した一部のアフガン国籍者に対し、臨時入国許可(Parole)と呼ばれる2年間の一時滞在許可を与えた。対象者は米国入国後、難民申請、特別移民ビザの申請、または合法的永住権を有する家族による保証を受けることが可能だ。アフガン国籍者は滞在許可の延長も申請できる。
CNNの報道によると、容疑者は2021年に米国に移住したのち、2024年に難民認定を申請し、2025年4月にトランプ政権によって認定を受けていた。
アフガン戦争中に米国に協力してタリバンと戦ったアフガン人を支援する「#AfghanEvac」のショーン・バンダイバー代表は、事件を受けて次のような声明を発表した。
「われわれは暴力を行使する者、行使しようとする者を拒絶し、非難する。この犯罪に恐怖と悲しみを抱くすべての米国人に連帯する。(中略)米国に再定住したアフガン移民や戦時中の協力者は、最も厳格な入国審査を受けている。(中略)今回の一個人による独立した暴力行為を口実に、コミュニティー全体を定義したり貶めたりしてはならない」。



