2. 侘び寂びは情緒的レジリエンスを高める
初めて侘び寂びに触れる人や、生産性第一の価値観が体に染みついた人にとって、侘び寂びは「諦めの哲学」のように感じられることがある。なぜなら、完璧以下のものを受け入れるなど、責任から逃げる行為のように思えるからだ。
しかしこれは、侘び寂びの本質とはまったく異なる。その本質は、受け入れることだ。つまり曖昧さ、変化、老いを拒まず、それを開いた腕で抱きしめることだ。心理学もこの考えと同調している。最新の研究によれば、困難な感情や経験を受け入れることは、情動調整システムが健全に働いていることを表す最も明確な兆候のひとつであり、侘び寂びの実践はこれに寄与し得る。
神経心理学の最近の研究も、この理論を支持している。2023年の研究では、「高い受容性(習慣的に何かを受け入れる)」を持つ人々の脳の構造は、「低い受容性」を持つ人々と比べ、情動調整に関わるネットワークが大きく異なることが示された。このことは、受け入れるという習慣が単なる気休めではなく、神経レベルでも測定可能な関連を持ち、より良い幸福感や、新しい経験に対する寛容さに結びついていることを示唆している。
侘び寂びの精神は、こうした知見に沿ったものである。平たく言えば、この哲学は変化と闘うのではなく、そこに寄りかかることを教えるものだ。また、これまでの経験によって刻まれた傷を消し去るのではなく、それに敬意を払うことを求めるものだ。これら2つの学びが時間をかけて融合すると、精神的にも、感情的にも、美しさと強さの両方を示すレジリエンス(回復力)が生まれる。
3. 侘び寂びは美しさを「完璧」と同一視しない
侘び寂びは、美しさは「経年変化による風合い」、つまり、傷や風化、時間が残した跡の中に宿ると教える。この哲学は、目的や成長に関する心理学の観点ともよく適合する。両者とも、長く続き、変化し、あるいは年を重ねていくものは、完璧に保たれたものよりも深い意義を持つと捉えるのだ。
デザインやウェルネスの領域では、この考え方が持続可能性を後押しし、「使い古されたもの」をすぐに捨てたい衝動を抑制する。2024年に発表されたデザイン美学に関する論文では、持続可能な陶器デザインに侘び寂びが取り入れられている現状が分析され、不完全さを受け入れる姿勢が、より環境配慮型のモノづくりにつながると論じられた。
心理学的な観点では、自分自身や人生を「進行中の作品」と捉えることで、忍耐、謙虚さ、長期的な成長のための余白が生まれる。不完全さは欠点ではなく、自分の物語における重要な転換点であり、節目になり得るのだ。
個人的な美意識という観点でも、シワや日焼けによるシミ、虹彩の色が薄れていくことは、衰えではなく「進化する美」のサインである。侘び寂びの哲学に学ぶことで、単にこの世界に存在し、生きているという証しにすぎない顔や体の変化を、悲しんだり、批判したりする衝動を減らせるだろう。


