日本で生まれた「侘び寂び」は、日常生活に潜む不完全さ、無常さ、控えめな美しさに気づき、それを味わうという考え方である。そして、その侘び寂びの原則を受け入れることは、生産性への極端な偏重、個人主義、完璧主義にとらわれた世界から抜け出すための方法となり得る。
侘び寂びを人生に取り入れることは、繰り返しの実践を通して、ひび割れや摩耗、時間の経過を欠点と捉えるのではなく、人生をより美しく、意味あるものへと変えるための中心的な要素として捉えることを意味する。
たとえば、壊れてしまった引き出しの取っ手を、自作した編み物の取っ手に交換することは、単に問題を修理するというだけの行為ではない。それは家具に美しい非対称性を与え、個性と唯一無二の魅力を加える行為である。それと同じように、顔のそばかすは、化粧で隠すべき欠点ではなく、自分だけが持つ、誇るべき特徴だとして考えるのだ。
このように、侘び寂びは、人生における「完璧ではないもの」を、代えがたいものや、非常に価値あるものとして理解する助けになる。こうした「不完全さを味わう」という視点は、科学的な裏付けのある、3つの明確な恩恵をあなたに与えてくれる。
1. 侘び寂びは完璧主義と不安を減らす
2004年の古典的研究では、非現実的な自己基準と厳しい自己批判を特徴とする「順応性のない完璧主義(maladaptive perfectionism)」が、交友関係に対する恐怖と強く結びついていることが示された。同様の知見は、その後の複数の研究でも繰り返し確認されている。これらの知見はどれも同じような理由を反映しているように見える。すなわち、完璧主義者は「欠点」が露呈すれば拒絶されると信じていることが多いのだ。
侘び寂びは、その恐れに直接挑む。不完全さを受け入れ、壊れたものや非対称なものの中に美しさを見ることで、自分や他人に存在する不完全さに対する思いやりや、それを受け入れる姿勢を促す。対人関係の観点では、この姿勢が完璧主義に付随する締め付けを緩め、人との深い結びつきを阻む「無意識の壁」を低くする可能性がある。
ご存じの通り、完璧主義は慢性的なストレス、先延ばし、自己疑念を助長する。侘び寂びはこの完璧主義に対する解毒剤として、自分自身、他者、周囲の世界に存在する欠点を受け入れることを促すのだ。
たとえば家を完璧に片づけることや、完璧なプレゼン資料を作ることにこだわる代わりに、欠けたマグカップや手書きのメモの魅力に気づくことで、それを評価するのではなく、「味わう」という視点へ切り替えられる。



