欧州

2025.11.28 09:30

ウクライナとのエネルギー戦争で露呈するロシアの脆弱性

ロシア軍による電力施設への攻撃で大規模な停電に見舞われたウクライナの首都キーウ。2025年10月10日撮影(Ukrinform/NurPhoto via Getty Images)

ロシア軍による電力施設への攻撃で大規模な停電に見舞われたウクライナの首都キーウ。2025年10月10日撮影(Ukrinform/NurPhoto via Getty Images)

米国が28項目から成る和平案を提示する中、ロシアとウクライナの真の戦いはパイプライン、製油所、電力網で繰り広げられている。ロシア産天然ガスをバルト海底経由でドイツに輸送するパイプライン「ノルドストリーム」の爆破(犯人はいまだに公表されておらず、西側諸国の情報機関も異議を唱えている)からロシアの燃料貯蔵施設やウクライナの変電所への攻撃まで、両国は互いのエネルギー施設を標的にしている。ロシアは石油精製と貯蔵に深刻な打撃を受けている一方、ウクライナの発電と送電も依然として脆弱(ぜいじゃく)な状態にある。エネルギーの戦場は力学を変容させており、これを無視した外交提案は現実を見誤ることになる。

米国のドナルド・トランプ政権が提示したウクライナ和平案は、ロシアに説明責任を問うことなく侵略に報奨を与え、北大西洋条約機構(NATO)を弱体化させるものだ。だが、エネルギー情勢を見ると、同和平案が想定しているほどロシアが優位に立っているわけではなさそうだ。ジャーナリストのアン・アプルボームは米誌アトランティックで次のように指摘した。「この和平案の要点は、ロシアの長年の要求を反映している。これは和平案ではない。これはウクライナを弱体化させ、米国と欧州を分断し、将来の大規模な戦争への道を開く提案だ」

同和平案は、ロシアが実効支配しているウクライナ南部クリミア半島、東部ドネツィク州、ルハンシク州のほか、南部占領下のザポリッジャ州とヘルソン州に対する支配権を維持することを想定している。ウクライナは軍隊を60万人に制限し、100日以内に新たな選挙を実施する(ロシアは20年間にわたり見せかけの選挙を続けてきた)ほか、憲法でNATO加盟を放棄し、外国軍の駐留の制限を受け入れることになる。戦後の復興支援は主に米国の監督下で実施され、ロシアは制裁緩和と国際市場への再統合の恩恵を受けることになる。

同和平案はウクライナの主権と安全保障を強調しているが、いずれも信頼性に欠ける。英経済誌エコノミストは「トランプ政権下では、たとえNATOに絡む問題であっても米国がロシアと戦争をするかどうかは定かではない。ウクライナ和平案はトランプ大統領の気まぐれに完全に左右されている」と指摘している。言い換えれば、28項目の和平案は事実上、ロシアに主導権を与えるものだ。

他方で、エネルギー情勢は混迷を極めている。ロシアはウクライナ軍の無人機(ドローン)とミサイル攻撃により、相当な石油精製施設や貯蔵施設を失った。製油所の損傷の大部分は2024年末~25年半ばにかけて発生している。戦時下の燃料物流を混乱させるため、ウクライナ軍が意図的に標的としているためだ。例えば、ロシア西部と首都モスクワ近郊の複数の製油所やパイプラインが機能停止に陥り、軍事用・民生用の燃料供給がともに制約されている。

一方のウクライナも甚大な被害を受けている。発電所、変電所、送電網が繰り返し攻撃を受け、停電の影響は数百万人に及んでいる。だが、緊急の送電網修理や寄付金による変圧器、迅速な設備交換により、現在では数日で電力が復旧する。

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翻訳・編集=安藤清香

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