欧州

2025.11.28 09:30

ウクライナとのエネルギー戦争で露呈するロシアの脆弱性

ロシア軍による電力施設への攻撃で大規模な停電に見舞われたウクライナの首都キーウ。2025年10月10日撮影(Ukrinform/NurPhoto via Getty Images)

エネルギー戦争でロシアが受けた打撃

エネルギー関連のデータは両者の不均衡を浮き彫りにしている。業界報告によると、ロシアの製油所は標的型攻撃により、1日当たり数十万バレルの処理能力を失っている。一方、ウクライナ側の送電網障害は深刻ではあるものの、緊急修理やマイクログリッドの導入、分散型蓄電システムによって次第に緩和されつつある。

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さらに、欧州はロシア産天然資源への依存度を大幅に削減した。ウクライナ侵攻開始前、欧州の天然ガス輸入ではロシア産が約4割を占めていたが、現在は1割程度にまで縮小している。要するに、ロシアはウクライナの領土の一部を占領しているが、エネルギー優位性は失われつつあるのだ。

過去1年間にわたり、ウクライナの無人機とミサイル攻撃がロシアの石油精製能力を損なってきた。業界誌によると、ウクライナ軍の攻撃で、ロシアの製油所の約17%(1日当たり約120万バレル)が停止に追い込まれ、640万トンの生産能力が失われた。ウクライナ紙キーウ・ポストは、ウクライナ軍の無人機が8月と10月にロシアの製油所の20%を破壊したと報じた。一方のロシアは休止中の製油所を再稼働させることで、損害の大部分を回復した。

石油精製能力の低下は今後、ロシアの燃料輸出能力と戦時収入の創出に重大な影響を及ぼす可能性がある。専門家は、持続的な攻撃により修復時間が長くなり、維持管理費が増加し、重要な部品の入手が妨げられることから、継続的な施設の損傷が間もなく限界点に達する可能性があると警告している。ウクライナ紙キーウ・インディペンデントは、ロシアは今年に入り、ウクライナ軍の長距離攻撃により、国内総生産(GDP)の4.11%に相当する741億ドル(約12兆円)の損失を被っていると報じた。ただし、この推計は修復が加速するにつれて変動する可能性がある。

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エネルギー戦争は交渉の構図も変えつつある。和平案はロシアの優位性とウクライナの脆弱性を過大評価している。実際は、ウクライナはロシアに戦略的損害を与えている。継続的なエネルギー損失を無視して領土を割譲する停戦は、交渉を損ないかねない。現実的に言えば、ロシアの経済とエネルギー基盤は完全に健全とは言えず、影響力は低下している。

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翻訳・編集=安藤清香

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