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2025.11.28 12:30

AIがゲーム機器やPC業界の価格高騰を誘発、RAM価格は数カ月で2倍に

Shutterstock.com

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AIによる桁違いの規模のメモリー需要は、消費者向けの供給を枯渇させ、より利益率の高い法人向け契約を半導体メーカーにもたらした。複数の報道によれば、こうした構造変化によってRAMやSSDの価格が急騰し、単純なゲーミング機器の価格やPCのアップグレードにかかる価格が高騰している。

AIデータセンター向けインフラには総額1兆1000億ドル(約172兆円)超が投じられ、これがメモリーとストレージ供給の大部分を占めるようになった。PCワールドによれば、これにより消費者市場の供給が逼迫し、RAMやSSDキットの価格が劇的に上昇した。

PCワールドの推計によれば、この結果、PCの短期記憶を担うRAMの価格がこの数カ月間で100%以上上昇している。

アーズ・テクニカも価格の急騰を報じている。8月から11月にかけてRAMの平均価格は208.2%上昇し、長期データ保存用ストレージであるSSDの平均価格も48.8%上昇したという。

最も大幅な上昇を記録したのは、ゲーミング環境やPC向けに普及している「Team T Force Vulcan」RAMキットで、同期間に価格は82ドルから310ドルまで上昇(278.1%増)したとアーズ・テクニカは報じている。

また、トムズ・ハードウェアによれば、メモリー不足により一部の64GB DDR5メモリーキットの価格は約600ドル(約9万3800円)にまで達しており、これはPlayStation5スリムより約200ドル(約3万1300円)高い価格帯だ。

PCワールドによれば、AIがPCやゲーミングシステムのアップグレードを高額化させているのは、メモリーを製造する半導体業界が有限の製造能力で運営されており、その能力の大部分が生成AI関連の大型かつ高収益の受注に向けられているためだ。一方で、流通する限られた供給の多くは、レノボなどの大手PCメーカー向けに割り当てられ、一般消費者向け小売市場にはほとんど出回らないという。

こうした価格高騰の恩恵を受けている企業のひとつとして、中国のレノボがある。同社は2025年から2026年末までに必要とされる分のメモリーを事前に確保しており、ウィンストン・チェンCFOはブルームバーグに対し、「価格が通常より約50%高い状況では合理的な判断だった」と述べている。

アップルも見通しは良好で、モルガン・スタンレーのアナリストであるエリック・ウッドリングは、供給が逼迫する状況下でも「最も影響を受けにくい」ハードウェアメーカーの1社だと評価し、米国のOEMメーカーで唯一「オーバーウェイト」に分類した。これは、アップル株が同業他社よりも良いパフォーマンスを示すと予想していることを意味する。

一方で、より厳しい状況に置かれる企業もある。モルガン・スタンレーはデルを含む7社のハードウェア企業をオーバーウェイトからアンダーウェイトに格下げした。CNBCによれば、デルはメモリーコスト上昇の影響を特に受けやすいとアナリストから判断されているという。

forbes.com原文

翻訳=江津拓哉

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