地球における山とは、生物学的な大聖堂だ。生物学者にとっては、進化の実験室でもある。周囲から隔絶された状況と、標高の高さから、独自の生態系がつくり出されるからだ。
雲に覆われて水が滴る熱帯雨林から、高山のツンドラ帯に至るまで、標高が上がっていくにつれて、ほかでは見られない違いが生じていく。その違いは、気温や酸素濃度に現れ、植生や生物の多様性にも見ることができる。
自然写真コンテスト「2025年ネイチャーズ・ベスト・フォトグラフィー(NBP)」で高評価を得た5枚の作品を紹介しよう。谷を削り取る氷河や、岩に群生する植物、極限環境に適応する生物など、生命体のダイナミックな姿をとらえた写真ばかりだ。
1. セントメリー湖の夜明け(米国モンタナ州グレイシャー国立公園)
グレイシャー国立公園がしばしば「北米大陸の王冠」と称されるのには、それだけの理由がある。北方林(タイガ)、高山ツンドラ帯、プレーリー(大草原)の生態系が交わる生物学的な十字路だからだ。
写真に写っているセントメリー湖は、そびえ立つ峰々と朝霧に囲まれた、標高4500フィート(約1370m)の高地にある。温暖な谷間と、寒冷な山の斜面の両方に適応した種が混在するのに完璧な環境だ。
セントメリー湖の上に位置する森林には、コントルタマツ(ロッジポールパイン)やエンゲルマントウヒが多く茂り、所々にカラフルな野生の花々が咲く草地が点在している。ここでは、非常に特徴的な垂直方向の階層構造が、多種多様な生物の命を支えている。高い崖にはマウンテンゴートが、ベリー類がなる茂みにはハイイログマが、氷河から流れ出る小川にはシノリガモが暮らしている。
この地でそれぞれの種が生存できるか否かを決めるのは、雪解けの季節的なリズムだ。雪解け水は、公園内に存在する700以上の湖と、一時的に形成される無数の湖沼へと流れ込む。
とはいえ、国立公園の名前の由来になっているグレイシャー(氷河)は、過去のものになりつつある。過去100年で、このあたりの氷河は100カ所から30カ所を切るまで減少し、冷たい水に生息する冷水種の多くに大きな脅威をもたらしているのだ。それでもなお、セントメリー湖の生態系は、驚くべきレジリエンスを維持し続けている。



