仕事力の錬磨は自助努力だけでは限界がある。企業内教育の真価が問われるのがここである。先の製造業は、半世紀以上前から社内に技術訓練所を設け、今や広大なトレーニングセンターとして常時、数多くの社員を育てている。単に技術を教えるだけではない。訓練生の動機づけ、悩みの解決といった心のケアも忘れていない。
仕事力は技術の世界に限らない。営業、財務・経理、ロジスティック、在庫管理等々にもタスクとスキルが融合し、止まることのないレベルアップが求められる。そしてここでも心のこもった企業教育が鍵になる。
往古から、人は石垣、人は城、人は堀、といわれてきた。近時、盛行する経営理論にはカタカナと数字があふれているが、その基底には心が必要である。企業教育の実を上げている会社の教育にはその心があると思う。
冒頭の同級生と最後に会った時の言葉が耳奥に残っている。「大人になっても勉強し続けて、憧れを実現したいね」。
彼女は遠くを見つめながら、当時流行っていた歌を口ずさんだ。
─行く先を照らすのはまだ咲かぬ見果てぬ夢 遥か後ろを照らすのはあどけない夢─中島みゆきさんの、「ヘッドライト・テールライト」の一節であった。
川村雄介◎一般社団法人 グローカル政策研究所 代表理事、公益財団法人 日本証券経済研究所 研究顧問。1953年、神奈川県生まれ。長崎大学経済学部教授、大和総研副理事長を経て、現職。


