関税合戦から重要鉱物、半導体やAI関連技術の規制へ──米中両国は今、近未来でどちらが技術覇権を握るかという大国間競争のさなかにある。勝敗を分けるカギとなるのは製造能力と技術開発力であり、次世代の技術を最も獲得し活用したものが勝ち残る結果となるだろう。だが商用目的で開発された科学技術やハイテク製品が国家の安全保障に影響を与えるようになった現在、技術競争は軍事・安全保障の競争に直結している。とりわけ米・中の争いでは、AI開発、量子技術、半導体製造能力の3つの先端領域を軸にして貿易や投資の各種規制がしかれ、自由な経済活動を制限するようになった。それは経済安全保障認識への急速な傾斜と合致し、世界経済システムを徐々に変えつつある。その先に待つ国際経済が、勝者が総取りして一強となるか、米中両国が並び立つ二極の構図になるのか、あるいはEUやインドなど複数の極が併存するのか現時点では予断を許さないが、経済のグローバル化はすでに終わりを迎えたと言ってよいだろう。
振り返れば、冷戦構造の崩壊から進んだ経済のグローバル化こそ中国が世界第2位の経済大国にのし上がった環境要因だった。効率的な利益の最大化を重視する新自由主義の下で広がったグローバル・サプライチェーンの進展やEコマースの広がり、インターネットを介した情報共有の深化は、相互依存を深めるとともに、「経済の武器化」を可能にする依存の非対称性をもたらした。結果からすれば、ほぼ世界中の国が中国と経済関係をもち、その圧倒的な製造能力に少なからず依存するに至ったのである。2025年春、中国のレアアース輸出規制が世界の製造業に打撃を与えたことを想起するならば、今や中国の経済的パワーは生産構造を介して関係各国の政策に影響を与えうるレベルにある。
そして中国政府は、グローバル化後においても経済的な競争で米国に負けることはない、と考えているようだ。2026年から始まる「第15次五カ年計画」を検討した第20期中央委員会第4回全体会議(10月20~23日)では経済政策の大きな転換は示されず、むしろ従来の路線の加速が表明された。また、その先の2031年からの5年間を念頭に「2035年までに中国の経済力・科学技術力・国防力・総合的国力・国際的影響力の大幅な飛躍を実現」するとの意欲的な中期目標が掲げられた。



