VC

2025.11.28 15:15

シリコンバレー発「特化型マイクロVC」が描く、製造テックイノベーションの波と日本企業への示唆

右からOmni Venturesのサブリナ・ペイズマン氏、サイモン・ランカスター氏、そして筆者 Courtesy of the author

日本企業と特化型マイクロVC──「戦略リターン一辺倒」からの転換

吉川:日本企業との協業経験を通じて感じたこと、ポジティブな面・課題だと感じる面を教えてください。

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サブリナ:何よりもまず、最初に私たちを信じてくれたのが日本の投資家・企業だったことに、とても感謝しています。共通して感じるのは、皆さんが「製造業の再興・再編の波にしっかり加わりたい」と強く考えていること。その手段として、私たちのような特化型マイクロVCへのLP出資やパートナーシップに関心をもってくださっているのは、とても心強いです。

サイモン:一方で、日本のCVCエコシステムには構造的な課題もあります。日本は世界でも有数のCVC大国ですが、長く続いてきたがゆえにやり方が固定化し、意思決定が遅く、コアなVCエコシステムと切り離されがちなケースも見てきました。

多くの企業が「財務リターンより戦略リターンを優先する」と宣言しますが、実際にはそれが足かせになり、投資のスピードもリスクテイクも制約されてしまう。結果として戦略的な成果も、財務的な成果も十分に得られないという状況に陥っていることが少なくありません。対照的に、自社とテーマ的にアラインした領域で、まず財務リターンをしっかり追求する方針に切り替えたCVCは、財務リターンだけでなく、戦略リターンのみにフォーカスした場合よりも、より良い戦略リターンを得られるようになっていると感じます。

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吉川:日本企業がイノベーションの波に乗り遅れてきた背景には、「既存事業とのシナジー」にこだわり過ぎた結果、どうしても「現在の延長線上の限界的な変化」にしか投資できなかったという背景があると私は考えています。

しかし、パラダイムシフトのときには、既存事業部だけでは捉えきれない変化が起きています。そんなときにこそ、未来の変化に賭けている特化型マイクロVCの「嗅覚」に、もっと信頼を置くべきだと私は考えます。マイクロVCのGPはファンドリターン最大化のために、「これから5〜10年先に立ち上がる新しいフロンティア」に極めて敏感です。日本企業には、「自社の延長線」だけでなく、彼らが向かっている方向に目を向け、パートナーとして歩む視点をもってほしいと思います。

サイモン:特化型マイクロVCの側も、賢いGPほどLP企業が抱える本質的な課題を深く理解しようとします。ある大企業の巨大なペインがあるなら、それは同業他社や周辺産業にも共通する大きなマーケット機会だからです。

私たちも企業LPやパートナー企業と定期的に対話し、「今、一番困っていることは何か?」をヒアリングしています。こうした対話を通じて、「財務リターンを追求しながら、そのプロセスの中で戦略リターンも最大化する」関係が築けるのだと思います。

日本企業へのメッセージ

吉川:最後に、日本の読者や日本企業へのメッセージをお願いします。

サイモン:まず、新著の日本語版を通じて、こうした議論を日本で深めていけることにとてもワクワクしています。日本は、企業パートナーシップとコーポレートLPが非常に重要な役割を果たす、世界でもユニークなエコシステムです。だからこそ、特化型マイクロVCという新しいプレイヤーとの連携が、日本のイノベーションにとって大きな意味をもつと信じています。

サブリナ:まずは、日本の皆さんに大きな「ありがとう」を伝えたいです。Omni Venturesを信じて早期から支えてくださった日本のパートナーの皆さんと、これからも共に学び、産業を前進させていけたらと願っています。

文 = 吉川絵美

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