製造業テックに特化した「現場型」マイクロVC
吉川:Omni Venturesのビジョンや特徴、他のマイクロVCとの違い、投資スタイルについて教えてください。
サブリナ:私たちは、製造業・サプライチェーンに特化した、超ハンズオンなプレシード/シードファンドです。Appleなどでの経験から、製造現場やサプライチェーンには山のような非効率と課題があることを知っています。だからこそ、「自分たちの経験とネットワークが最も大きな価値を生む領域」にフォーカスしています。
他のVCとの大きな違いは、とにかく早い段階から、深く現場に入り込むこと。創業者と一緒に顧客を訪問したり、工場に足を運び、製造ラインや品質の課題について議論する。私たちのネットワークを活かして、創業者にメーカーやサプライチェーンの関係者と会ってもらい、「今、現場で一番のペインポイントは何か」を直接ヒアリングしてもらう。こうして、顧客や現場と早期に結びつけ、プロダクトの方向性を磨き込むことを大切にしています。
吉川:ある意味、スタートアップのチームの延長のような存在ですね。
サイモン:投資対象は「新しい業界」ではなく、歴史ある製造業・インダストリアルです。しかしその分、デジタル化の余地が大きい。ロボティクスやAI、ファクトリーオートメーション、サプライチェーンインテリジェンスが、ようやく本格的な波として押し寄せています。
実は、この領域は日本と非常に相性が良いんです。強力な製造業の基盤と、フィジカルな技術への深い理解があるからです。実際、私たちのファンドのファーストクローズはほぼすべて日本のLP(リミテッド・パートナー)でした。それくらい、日本の投資家・企業との共鳴は当初から強かった。シリコンバレーで生まれたAI・ソフトウェア技術を、日本をはじめ世界中の製造・サプライチェーンの現場に橋渡しすることが、私たちの大きなビジョンのひとつです。
製造業のパワーマップは変わる──日本に訪れているチャンス
吉川:製造業・サプライチェーンで起きているトレンド、そして日本にとっての意味を教えてください。
サブリナ:大きな流れとして、「これからの10年で製造業のパワーマップが組み替わる」と感じています。地政学リスクの高まりにより、各国・各企業がサプライチェーン再構築を進める中で、新しい製造ハブがどこになるのかが問われています。
その中で、私たちは日本のような国に大きなチャンスがあると見ています。歴史的に、日本はデザイン、エンジニアリング、高品質な製造で世界をリードしてきました。その強みが、AIとロボティクスの時代に形を変えて再び求められ始めているのです。ヒューマノイドロボットのようなトレンディな領域だけでなく、AIが物理世界と接続されるあらゆるポイントで、ハードとソフトの統合が必要になっています。私たちが特に注目しているのは、その中でも工場やサプライチェーンのインテリジェンスを高める「デジタルレイヤー」。製造再興・再編の波のなかで、このレイヤーを押さえるプレイヤーには大きなポテンシャルがあります。日本の企業・スタートアップにとっても、今こそこの領域で存在感を発揮する絶好のタイミングだと思います。


