書籍『シリコンバレーVC最前線:特化型マイクロVCの台頭』に込めた思い
吉川:その一連の変化をまとめたのが今回のご著書ですね。なぜ今、本を書こうと思ったのでしょうか。
サブリナ・ペイズマン(以下、サブリナ):ここ数年、私たち自身が「おそらく過去20年で最も厳しいVCマーケット」の中でファンドを立ち上げ、資金調達してきたなかで得た学びが、過去の世代のVCたちの経験とはかなり異なっていると感じてきました。だからこそ、新しい時代のマイクロVCのリアルな知見を、コミュニティやLPと共有したいと思ったのです。ファンドレイズと投資で忙しい時期ではありましたが、サイモンが「知見が一番フレッシュな今こそ残すべきだ」とはっぱをかけてくれました。
サイモン:私たちは2年前から「Beyond Emerging Managers」という新興VCマネジャーのコミュニティを運営しており、今では250人以上が参加しています。最初は自分たちの仲間の間でお互いに学びあうサポートグループを作ることが目的でしたが、自分たちがVCとしての経験を積んでいくうちに、後から入ってくる人たちにさまざまなアドバイスする立場になりました。その中で、「これは体系化して本としてまとめた方が、コミュニティ全体にとっても良い」と思うようになり、「ペイフォワード」の精神で、執筆に踏み切りました。
Omni Venturesの原点──「趣味のエンジェル投資」が本業へ
吉川:次に、お二人自身のキャリアと、なぜ自分たちのファンドを立ち上げたのか、その原点を教えてください。
サイモン:私にとっては、シリコンバレーでの長年のキャリアの延長線上にあった、エンジェル投資とスタートアップ支援に対する「パッション」を本格的な職業への進化させる、まさに良いタイミングだったからです。AppleでR&Dとサプライチェーンに長く携わり、その後スタートアップにも参画しました。その傍らで6年ほど前にエンジェル投資を始めたのですが、そこで出会った起業家たちの情熱に完全に魅了されました。週末のイベントでも夜のパーティーでも、皆が当たり前のように仕事の話をしている。それが「やらされている仕事」ではなく、「やりたくて仕方がないこと」である場所――それが今でもシリコンバレーのエッセンスだと思います。
そうした世界の一端に、エンジェル投資家として関われることがどんどん楽しくなり、「これを本気のキャリアにできないか?」と考えるようになりました。いわば、アフター5の趣味だった起業家支援を、フルタイムの仕事に変えるチャレンジです。そこでAppleでの同僚だったサブリナと再び合流し、最初はアクセラレーターとしてスタートしましたが、優れたプレシードVCは実質的にアクセラレーターと同じ価値を提供している、という気づきもあり、現在の特化型ファンドの形へとピボットしました。
サブリナ:サイモンの起業家的なマインドセットはApple時代からよく分かっていましたし、私自身もエンジニアとして製造ラインの仕事をしながら、「産業全体を変える側に回りたい」という思いが強くありました。エンジニアではなく、「産業変革のチェンジメーカー」として起業家と並走できることに、大きな魅力を感じています。


