キャリア

2025.12.02 14:00

3人に1人が「マッチングアプリ就活」、職探しのための利用が増加──厳しい雇用状況とリスク

AndreyPopov / Getty Images

恋愛目的に見せかけ仕事の相談に切り替える方法は、裏目に出る可能性がある

とはいえ、キャリア目的でマッチングアプリを使う前に、落とし穴があることを意識しておくべきだろう。まず、マッチングアプリを仕事のために使うには一定の大胆さが必要だ。恋愛目的に見せかけてマッチし、その後で仕事の相談に切り替えるやり方は、相手に誤解を与えかねず、裏目に出る可能性もある。少なくとも気まずさは避けられない。

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その逆に、「ネットワーキング目的で利用している」と正直に伝えるやり方にも、別の気まずさがつきまとう。調査の自由回答では、複数の参加者が「マッチングアプリでネットワークを作るのは気まずい」と答えている。ある参加者は「正直、かなり変な感じだった。仕組みが壊れてしまっているから、みんなこんなことをしないといけないのかと感じた」と答え、別の参加者は「うまくはいったけれど、頼む側には相当な図太さが必要だ」と述べている。

マッチングアプリをキャリア目的で使う行為は、パートナーとの間に溝を生む

恋愛関係にある人にとっては、状況は複雑になる。たとえ意図をすべて正直に伝えたとしても、マッチングアプリをキャリア目的で使う行為そのものが、パートナーとの間に溝を生む可能性がある。利用目的を伝えておくことは助けになるが、相手が恋愛目的のプラットフォームで他人とやり取りする姿を見る側にとっては、それだけで納得できるとは限らない。

採用権限を持つ相手との関係は倫理的な一線を越え、容易にグレーゾーンに向かう

マッチングという文脈は、自分の意図が誤解されやすい環境でもある。キャリアに関する無害なメッセージが、すぐに個人的な領域へと逸れていく危険がある。相手との力関係も問題だ。どちらか一方が採用権限を持っていたり、有力な人物への紹介を提供できたりする場合、その関係は簡単に倫理的な一線を越えうる。肉体関係を持った場合のほうが仕事上のメリットを得やすかったという調査結果は、こうしたやり取りがいかに容易にグレーゾーンに向かうかを物語っている。

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仕事に就いた後も評判リスクがあり、採用側にも深刻な倫理問題が発生する

問題は、仕事に就いた後にも尾を引く可能性がある。もし同僚が、あなたが新しい職場の上司と「マッチングアプリでマッチした」と知れば、働きぶりを示す前から、あなたの信頼性に疑いが生じかねない。特に女性にとっては、ここに追加のハードルがある。女性が仕事とプライベートの境界を曖昧にした場合、男性にはほとんど降りかからない種類の批判や評判リスクを負うことになりやすい。

採用担当者がアプリで知り合った相手を採用すると、セクハラの告発を招く

そのリスクは、求職者側だけに及ぶものではない。管理職や採用担当者が、マッチングアプリで知り合った相手や、恋愛関係になった相手を採用した場合、深刻な倫理問題や法的リスクを招く可能性がある。たとえ関係が双方合意のものであっても、えこひいきや利益相反を疑われる恐れがあり、場合によっては「採用されるために関係を持たざるを得なかった」と新入社員が主張すれば、セクハラの告発に発展しかねない。

恋愛的な駆け引きを避けつつ人脈を広げられる方法は、いくらでもある

マッチングアプリをネットワーキングの手段として使えば、たまには成功例が生まれるかもしれない。しかし、この方法は、仕事と私生活の境界を危険なほど曖昧にするコントロールの難しい高リスクの戦略だ。

また、このようなリスクを避けるためのネットワーク作りには、LinkedInが唯一の道だということでもない。業界のカンファレンスや大学の同窓ネットワーク、各種のネットワーキングコミュニティ、業界団体、特定分野のSlackグループなど、恋愛的な駆け引きを避けつつ人脈を広げられる方法はいくらでもある。

forbes.com 原文

翻訳=上田裕資

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