3. 若いホッキョクグマとセイウチ(ノルウェー、スヴァールバル諸島)
この写真には、金色に輝く北極の太陽を背にして、流氷の上を歩く1頭の若いホッキョクグマと、凍てつく海を泳ぐ1頭のセイウチが捉えられている。穏やかであると同時に、緊張感に満ちた光景だ。静謐な光が、弱肉強食の現実を包み込む。
若いホッキョクグマは、誕生から間もないうちから、多くの物事を学ばなければならない。ハンターとしての経験が足りないうちは、しばしば大きく危険な獲物に不用意に近づくという間違いを犯す。セイウチはまさにそんな獲物の一つで、長い牙と巨体はホッキョクグマにさえ大きなリスクとなる。成獣のホッキョクグマはセイウチを捕食することもあるが、必要な狩りの技術を身につけていない若い個体は、負傷することや餓死することも珍しくない。
一方のセイウチ(学名:Odobenus rosmarus)は、北極圏の海底環境をつくる生態系エンジニアだ。学術書『Encyclopedia of Marine Mammals』の記述によれば、セイウチは強力な牙と丈夫なひげで底生無脊椎動物を探し、掘り返して食べる。彼らのこうした行動が、海底の生態系の形成に寄与している。
この写真に見られるように、セイウチは脅威にさらされると水中へと退避することが多い。捕食者が近くにいる不安定な氷上よりも、水中の方が安全だからだ。


