対して日本では、ポッドキャスト市場は依然として規模が小さく、利用者も限られている。2024年のOtonal社の調査で「月1回以上の利用者」は17.2%(約2150万人)に過ぎず、広告市場も最大4億ドル程度と、米国の6分の1にとどまるとされている。
なぜ日本と米国でここまで差がついたのか
その背景には、日本の芸能事務所がポッドキャスト出演に対して概ね消極的なことや、影響力の大きい旧ジャニーズのタレントが、デジタル媒体での露出を制限していたこと、収録時間に対しての報酬が他媒体と比べて少ないことなどが挙げられる。また、大手広告代理店がその市場拡大の可能性を見込めず、番組制作を試みても広告宣伝費獲得が容易ではなく、大手既存メディアは費用対効果が期待できないと軽視してきた。
一方、米国ではアーティスト本人もマネージメントも、ファンダムの構築にポッドキャストが有効であることを7、8年前から認識し、有料できけるポッドキャスト番組を作成し、番組内で興行チケットやグッズの販促をし、ポッドキャストによる成果を積み重ねてきた。さらに、著名インフルエンサーとのコラボなどでも相乗効果に期待が高まったことも規模拡大に繫がったと見られる。
日本でも“攻める”企業が登場
こうした日米の差が広がるなか、日本でもようやく本格的に「動画×ファンダム」を起点とした新しい試みが動き出した。「動画の教祖」として知られ、電通や博報堂を抑えてTikTok Ad Award 2025のグランプリを受賞したSNSマーケターの明石ガクト氏と、旧ジャニーズ事務所のアーティストマネジメント事業を引き継いだSTARTOエンタテイメントの創業者である福田淳氏の2人がタッグを組み、専用スタジオを備えたPowerHouse社を立ち上げた。彼らはインターFMを通じてのラジオ放送と、Spotifyでのビデオ・ポッドキャスト配信を組み合わせた新番組「UMP~未確認人物倶楽部」を自ら出演してスタートさせる。

もし今後、PowerHouseが手がける複数の番組が「視聴者の支持」と「広告主の出稿」の両方を獲得できれば、日本でもYouTubeに次ぐビデオ・ポッドキャスト市場が一気に花開く引き金になり得るであろう。


