「私は経営を学んだことも、会社員の経験もない。だから頭を下げて教わり、助言は素直に受け入れてきた」
お笑いコンビ「爆笑問題」を擁する芸能事務所タイタンの社長であり、太田光の妻でもある太田光代。元は自身も大手「太田プロダクション」に所属するタレントだったが、爆笑問題の独立後、タイタンを立ち上げ、マネジメント業に奔走してきた。以来、困ったときに頼り、規範にしてきたのが、古巣・太田プロの磯野泰子副社長だ。
爆笑問題が出演するCMと、司会が決まったテレビ番組のスポンサー企業が、競合同士と判明したときのこと。
「角が立たないよう2社とも断ろうと思ったのですが、副社長に相談したら『どちらも引き受けると言いなさい』と。事情を説明したらどちらか1社は契約を取り下げるかもしれないけれど、二つとも断れば両方に迷惑をかけるだけだから、と助言をくれました」
今も不祥事の際は太田がひとりでメディア対応に当たる。「窓口を一本化したほうが、事実が伝わりやすい。誤解されるのが何よりも嫌なので」。
自身を“雑用係”と評する。社員は得意分野に専念させ、人手が足りないところを自分が担うので“なんでも屋”なのだという。その太田も還暦を迎えた。「しっかり判断できるうちに2代目社長にバトンを」と考えている。
「変化の激しい社会。経営者に必要な資質もその都度変わる。だからこそ、変化に柔軟で“なんでもできる人”を後継者に選びたいですね」
おおた・みつよ◎1964年生まれ。モデル・タレント活動を経て「爆笑問題」の太田光と結婚。93年タイタンを設立。お笑い養成所「タイタンの学校」や、ハーブ専門店など多角的に事業を運営。新著『社長問題!私のお笑い繁盛記』(文藝春秋)が販売中。



