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2025.11.29 13:30

ロッテの壁を壊し日韓1兆円を目指す連携の哲学:ロッテホールディングス 玉塚元一

玉塚元一|ロッテホールディングス 代表取締役社長 CEO

玉塚元一|ロッテホールディングス 代表取締役社長 CEO

ロッテHDに招聘されて4年半。玉塚元一には忘れられない場面がある。会長の重光昭夫が欧州の工場を訪問したときのこと。視察には日本と韓国、両ロッテ幹部が同行。その後の食事会で、重光がこう語ったのだ。

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「『両国の幹部がワンテーブルで議論しているのは感無量』と、あいさつしていました。それまで日本と韓国は交わらずにやってきた。新しいステージに入った様子を見て感慨深いものがあったのでしょう。私も、自身に課せられたミッションの重さをあらためて認識し、身が引き締まりました」

こう明かすように、ロッテは日本と韓国で別々に成長してきた。創業者の重光武雄がガムで起業したのは日本。1965年の日韓国交正常化の2年後には祖国・韓国に進出し、ホテルや流通、化学などに手を広げて一大財閥を育て上げた。この間、日本と韓国はオペレーションを分離しており、「創業者はお互いを競わせるようにしてそれぞれを発展させた」という。

ただ、近年は両国ともに壁にぶつかっている。現在売り上げ7兆円規模の韓国は、柱のひとつである基礎化学品が苦戦中だ。一方、菓子を中心とした日本は売り上げ規模4000億円弱で、成長が30年止まっている。創業者の死後、状況を打開すべく外部から招かれたのが、プロ経営者の玉塚だった。

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「日本はポテンシャルがあるし、韓国はさまざまな事業シーズをもっています。日韓で垣根を取り払ってかけ算をすれば、新しい事業創造は可能。グループ全体で成長戦略を立案・実行することが大切です」

日韓連携は動き始めている。菓子の売り上げは日韓それぞれ国内3,000億円規模。その他、両国の海外事業を足すと1,600億円。連携の場は海外だ。

「これまでベトナム、インドネシアとタイは日本、そして中国やミャンマーは韓国とテリトリーを分けていました。しかし、菓子は似た商品を展開しているのに別々にやるのは非効率。全体で最適化すれば生産性が向上し、効果的なマーケティングもできます。現在、日韓経営層のステアリングコミッティーで戦略を練っていて、来年度には具体策を実行できるでしょう。将来は海外事業を倍の規模に育て、ロッテ全体で計1兆円にしたい」

動き始めた“ワンロッテ”だが、道のりは容易ではかった。

韓国はトップダウンのカルチャーで、スピードは速いものの詰めの甘さがある。逆に日本はエグゼキューションが得意だが、動き出しが遅い。企業文化が異なるため、連携にあたって日本の幹部から韓国との親和性に疑問が出たこともあった。

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文=村上 敬 写真=苅部太郎

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