経済・社会

2025.11.27 16:15

解体前の神戸「モトコー」から問い直す これからの都市の個性

JR元町駅西口にある「モトコー」入口

JR元町駅西口にある「モトコー」入口

全国各地の都市で、戦後につくられた建物やインフラが寿命を迎えている。とはいえ、再開発をするとどこも似たような街となるので「かつての魅力が失われた」という声を聞く。均質な街並みや商業ビルでは、個性ある街に宿っていた「偶然の出会い」や「雑多な個性」も失われてしまうようなのだ。

そんななか、いま神戸の元町高架下で始まった試みが注目を集めている。

大阪と神戸を結ぶJR神戸線。その元町駅から神戸駅まで約1.5キロメートルの高架下に約300の店が軒を並べる商店街がかつて存在しており、長年にわたって「モトコー」という愛称で親しまれてきた。

戦後の混乱期に生まれた「闇市」にルーツがあるとされ、1970年代から80年代頃には、古着やレコード、中古のゲームといった普通の店には置いていない商品が安く入手できたので、関西圏だけでなく、四国や中国地方などから訪れる人で賑わっていた。 

戦後の混乱期の神戸の市街地
戦後の混乱期の神戸の市街地

しかし時の流れは止められない。空き区画が増加し、建物の老朽化が進む。さらに高架の中央にある通路から店舗内が見通しにくいなど、防火・防犯上の問題が顕在化。高架下にあった店舗の建物は順次解体や撤去が始まり、現在は鉄道高架橋の耐震補強の工事も行われている。

その結果、一部区域では店舗のシャッターは閉じられたままで、歩行者用の通路として使われるだけになっていた。 

通路として使われている現在のモトコー
通路として使われている現在のモトコー

ところが、この場所を利用して、ダンスや絵画、音楽といった分野のアーティスト、さらに自分が持つスキルや人脈などで地域課題を解決しようと奮闘するローカルプレイヤーたちなど、約30の個人や団体が表現活動をする「モトコロジー(MOTOKOLOGY)」というイベントが行われている。今年7月から来年3月までの期間限定だという。
 
このイベントには、かつての高架下での人々の記憶をアーティストたちがそれぞれの得意とする方法で表現して、これらを記録として残すという狙いがある。だが、もっと奥深い意味も込められているようだ。そのモトコロジーのプロデューサーを務めるのが田村圭介だ。

モトコロジー・プロデューサー田村圭介
モトコロジー・プロデューサー田村圭介

田村は神戸の大学を卒業してから衣類や雑貨のセレクトショップで働いたあと、実家がある徳島県でイチゴを栽培する農業生産法人を経営。その後2013年に現在の会社を立ち上げると、古民家再生をはじめとする遊休資産の利活用やブランドづくりなどの企画などを手掛けてきた。

徳島に住んでいた高校生のときから、「モトコー」には足を運んでいたという田村だが、この場所は商店街のなかでも、特異な存在であったと語る。

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文・写真=多名部 重則

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