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2025.12.03 12:15

ファイザーのDEI戦略 社長も向き合った「男性社員の意識改革」|WOMEN AWARD 2025 企業特別賞

生理痛体験プログラムでは、筋電気刺激(EMS)で再現される痛みを男性社員が疑似体験。

生理痛体験プログラムでは、筋電気刺激(EMS)で再現される痛みを男性社員が疑似体験。

Forbes JAPANでは、女性活躍推進法が施行された2016年から「WOMEN AWARD」を開催してきた。2025年は、1665社を対象としてランキングを作成した。調査対象となった企業のなかで、男性社員の生理痛疑似体験というユニークな研修で企業特別賞に選ばれたのが、製薬メーカーのファイザーだ。“見えない痛み”を共有することで、性別を超えた相互理解を目指すという。


男性の立場から女性のさらなる活躍や成長を促し、公平で包括的な職場の実現を目指す──。

「Men as Allies(MAA)」の定義を、ファイザーはこう説明する。グローバル本社で先行していたこの活動に着目し、日本での展開を提案したのは男性社員だった。初年度のMAAは、男性社員向けに「男性学」セミナーを開催。昨年は、生理痛を疑似体験する研修のキャラバンを行った。主に営業および製造部門の管理職ら約150人が参加したが、キャラバンを締めくくる「国際男性デー」イベントには、今年1月に代表取締役社長に就任した五十嵐啓朗の姿もあった。現在MAAのメンバーは約200名となり、五十嵐もそのひとりだ。

女性の労働生産性に大きな影響を与える生理痛のつらさを知り、誰でも痛みや不調を抱えることがあるという気づきが、職場での対話の活性化につながった。「Men As Allies」の活動は、有志社員のチームが担っている。
女性の労働生産性に大きな影響を与える生理痛のつらさを知り、誰でも痛みや不調を抱えることがあるという気づきが、職場での対話の活性化につながった。「Men As Allies」の活動は、有志社員のチームが担っている。

「ジェンダーエクイティについて、普段から社長とよく話をするんです」と、同社で女性活躍推進のリーダーを務める松本亜美は言う。多様性を受け入れて成長していくことは経営戦略の一つだとして、五十嵐はMAAの活動にも深く共鳴しているという。

社会の風潮や価値観を的確に捉えた企画を次々打ち出し、社長まで巻き込んだ啓発プロジェクトを実行しているファイザーだが、実は社内にDEIの専任部署は存在しない。意欲の高い社員が有志で活動しており、各自が課題を見つけてきて提案する。すると、松本らと共同でチームの代表を務める役員が、経営陣に直接働きかけて賛同を取りつけ、リソースや予算を確保する。一般社員と役員が両輪で走るので、スピード感をもって実現できるのだ。

「ステレオタイプの押しつけ」から解放を

そんなチームの力を結集し、今年はなんとショートムービーを制作。職場のアンコンシャスバイアスをテーマにしたドラマだ。

「送別会の花束は女性が用意するもの」「若手の営業職はいつも元気にしていなければ」……

劇中では、職場で誰もが経験したことがありそうな“モヤる”シーンが展開される。勝手な思い込みや決めつけで、ステレオタイプの役割を押しつけていたことに気づかされる。

ドラマ『このモヤに名前がつくまで。』は、11月の「国際男性デー」に合わせて披露され、全国の社員に向けてオンラインでも配信。インスタグラムやYouTubeでも公開し、社外への波及も期待する。

「DEIは社会全体で進めていくもの。ファイザー社員だけが意識変革をしてもダメなんです」(松本)

日本社会の根底にある性別役割分業意識が、職場での行動を縛り、生き方を縛ることにつながっている。社会の「偏り」を是正しなければ、真のジェンダーエクイティ(公正)は実現しない。

ファイザーがDEI活動を通して目指すのは、性別や世代などあらゆる違いを理解し、誰もが能力を発揮できる環境をつくることだ。そのために、まずは会社のマジョリティである男性が意識を変え、組織全体の意識を変えていく。意識変革への挑戦は、ファイザージャパンの成長の原動力となっている。

WOMEN AWARD 2025 企業特別賞
「男性学」勉強会 生理痛体験キャラバン


ファイザー◎米ニューヨークにグローバル本社を置く研究開発型の製薬企業。1953年に日本進出。愛知県にはグローバルの製造拠点の一つとして自社工場を構える。日本法人は2023年に設立70年を迎え、現在の従業員数は約2800名。

文=フォーブス ジャパン編集部

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