北米

2025.12.01 13:30

後払い決済「BNPL」は消費者を借金地獄へ誘う“時限爆弾”、米国議員やFRB理事が警鐘

Shutterstock.com

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後払い決済サービス「BNPL(Buy Now, Pay Later。今買って後で払う)は、米国のオンライン通販や実店舗で急速に広がった少額分割払いサービスだ。支払いを数回に分け、期日までに払えば利息ゼロとうたうものが多い。インフレとクレジットカード金利の高止まりで家計が圧迫される中、ホリデー商戦では日用品から医療費までBNPLで支払うケースが増えており、小売企業も売上を維持する切り札として導入を進めている。

しかし、網羅的な公式統計は整っていないにもかかわらず、各種調査や監督当局の報告からは、利用者数の増加とともに貸付額・延滞率が急速に膨らんでいる兆候が見える。本稿では、そうした断片的なデータと専門家の指摘をもとに、BNPLが短期的には売上と消費を押し上げる一方、長期的には脆弱な消費者と小売企業の双方に重いツケを残す“時限爆弾”になりつつあると警告する。

年末商戦が厳しさを増し、小売各社が消費者の購買意欲を支えるBNPLへの依存を強める

2025年の年末商戦は例年以上の厳しさが予想される中、小売各社は、BNPL決済への依存を強めている。全米小売業協会はホリデー商戦の売上が前年比3.7〜4.2%増になると見込むものの、多くのアナリストは、その伸びを押し上げる主因が需要の増加ではなく価格の上昇だという見方で一致している。こうした環境下で、BNPLは家計に余裕がないままでも消費を続けられる手段として、消費者にいっそう魅力的に映る。

ペイパルなどBNPLサービスの導入によって、平均注文額が91%増えるとの報告

BNPLは、購入時に「すぐ手に入る」快感を与える一方で、支払いを後ろにずらして分散させる仕組みが、通常なら見送ったであろう買い物を後押しする。主要事業者の1つであるペイパルは、BNPL導入によって小売企業の平均注文額が91%増えると報告している。この市場は、同社のほか、Afterpay(アフターペイ)、Affirm(アファーム)、Klarna(クラーナ)、Sezzle(シズル)、Splitit(スプリットイット)、Zip(ジップ)といったサードパーティ事業者がリードし、クレジットカード会社も同様のサービスを拡充しつつある。

BNPLの手数料はカード会社より割高、小売企業は将来性の低い顧客を高コストで獲得

しかし、小売業者が得る短期的メリットは、長期的な代償を伴うおそれがある。BNPLの利用者は、小売企業が長期的に育てたい「理想の顧客」とは言いがたく、最も経済的に不安定な層ほど強く惹きつけられる傾向が強い。しかも、通常の信用審査を経ずに簡単に融資を受けられる仕組みは、こうした層を過剰な債務へと追い込みやすい。

サードパーティのBNPL事業者が小売企業に課す手数料は、クレジットカード会社より高くなるのが一般的だ。その結果、小売企業は、将来性の乏しい顧客を獲得するために、より高いコストを負担している格好になる。

業界アナリストのウォーレン・ショールバーグは、リンクトインへの投稿でこう指摘している。「BNPLというプロセス全体には、災厄の種がそこかしこに埋まっている。それはBNPLを受け入れる小売企業にとっても、BNPLを使う消費者にとっても同じだ。この仕組みは、おそらく誰にとっても良い結末にはならない」。

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翻訳=上田裕資

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