北米

2025.12.01 13:30

後払い決済「BNPL」は消費者を借金地獄へ誘う“時限爆弾”、米国議員やFRB理事が警鐘

Shutterstock.com

若年層や経済的に不安定な層が支払い遅延に陥りやすく、Z世代の遅延率が高い

BNPLが小売企業と消費者の双方にとって魅力的であることは疑いようがない。「分割払いが可能だとわかれば、購入を完了する可能性が高まる」と、ペイパルのスモールビジネス&金融サービス部門のゼネラルマネージャーであるミシェル・ギルは声明で述べている。しかし、この利便性の裏側には暗い影がある。BNPLは、特に若年層や経済的に不安定な層にとって、容易に“使いすぎ”を招きかねない。

advertisement

Bankrateの調査では、BNPL利用者の約半数が何らかの問題を経験しており、4分の1は「BNPLが過剰支出を招いた」と回答した。これに続き、16%が支払い遅延、15%が購入の後悔、14%が返品や返金の難しさを挙げている。

一方、他の信頼できる調査では、支払い遅延の割合はさらに高くなる。Motley Foolは、BNPL利用者の24%が支払いを遅延し、Z世代ではその割合が32%に達したと指摘する。Z世代は、そもそもクレジットカードの発行審査を通りにくいこともあり、カードではなくBNPLを選びがちだともされる。

LendingTreeの調査でも、BNPLの支払い遅延経験者は全体の41%にのぼり、世代別ではZ世代の57%、ミレニアル世代の49%が支払い遅延を起こしていた。こうした世代が、最も家計の余裕がないグループにあたる。

advertisement

米連邦準備制度理事会(FRB)はBNPLの正式な延滞データを保有していないものの、BNPLローンの支払い遅延率を24%と報告している。ほかの推計では、BNPLの債務不履行率は2〜6%の範囲に収まるとされる。

とはいえ、FRBの調査は一貫して同じ結論を示している。最も脆弱な層──すなわち債務不履行の可能性が最も高い層──ほどBNPLに強く惹きつけられるという点だ。

FRBはこう報告している。「全体的な金融状態が低いと回答した成人や、流動性や信用面で制約を抱える成人はBNPLを利用する可能性が最も高かった。また、こうした利用者の多くが『BNPLを使わなければ購入できなかった』と答えている」。

通常の信用審査があれば許可されないであろう家計が逼迫した層の買い物を、BNPLが可能にしてしまう──そこに問題の核心がある。

BNPLは、いずれ破裂せざるを得ない“バブル”だ。延滞や債務不履行が避けられずに増え、消費者が借金で身動きが取れなくなれば、責任の押し付け合いが始まる。本来なら自分の問題を振り返るべき場面かもしれないが、経済的に困窮した消費者が自分を責める可能性は低い。むしろ、身の丈を超える支出を促した小売企業やBNPL事業者に怒りの矛先が向かうだろう。

FRB理事は延滞率が25%まで上昇と指摘、懸念が高まっていると警告

FRBのマイケル・バー理事は、BNPLを「債務のわな」と呼び、延滞率が25%まで上昇していると警告した。「これは懸念が高まっている分野であり、我々全員が注意を払うべき問題だ」と、バーは7月の金融包摂に関するFRB会議で語っていた。

BNPLが生み出す消費者債務の“瓦礫”の中で、最終的に責任を負うことになるのは、「今買って後で払う」という誘い文句で消費者を引き込み、成長を支えてきた小売企業各社だと小売アナリストのショールバーグは警鐘を鳴らす。

「これは消費者にとって大きな落とし穴だ。彼らの多くは自分がどれほど深く借金に踏み込んでいるか理解していない可能性がある。多くの利用者の信用力が脆弱であることを考えれば、小売企業や販売者にとって“回収できないリスク”は極めて大きい。消費者を借金地獄へ誘い込むようなビジネスモデルが持続可能なわけがない──これは時限爆弾だ」とショールバーグは指摘した。

forbes.com 原文

翻訳=上田裕資

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事