ロシアは1994年、ウクライナがソビエト時代から保有していた核兵器を放棄する見返りとして、同国の独立を尊重することを約束した。ロシアはウクライナ南部のクリミア半島を併合した後、2015年に恒久的な停戦に合意した。ところが、両協定は完全に無視されている。
幸いなことに、衝撃を受けた欧州諸国と米連邦議会の安全保障専門家らから反発が起きている。英国、ドイツ、フランスは、ウクライナの領土を巡る交渉の前提として、即時停戦を求める24項目から成る提案を起草した。この提案は、外国軍をウクライナに駐留させる可能性を開くことで安全保障を強化するとともに、ロシアの侵攻によって破壊された国を再建するために、欧州で凍結されている3000億ドル(約47兆円)のロシア資産を活用することも盛り込まれている。
現在、米国と欧州、ウクライナの間で協議が行われているが、真に独立したウクライナを実際に保証する計画が成立する可能性は皆無だ。プーチン大統領はウクライナを征服するという目標を達成できると信じている。同大統領はソビエト連邦を構成していた国々、主にリトアニア、ラトビア、エストニアのバルト三国に対し、実際に脅威を示すことができた。バルト三国が再びロシアの支配下に置かれる可能性も否定できない。プーチン大統領はポーランドをはじめとする中東欧諸国にも圧力をかけるだろう。同大統領は、冷戦に勝利し、2022年のウクライナ侵攻まで欧州の平和を守ってきた北大西洋条約機構(NATO)を粉砕することを望んでいるのだ。
プーチン大統領の戦略は単純明快だ。米国が忍耐力を失い、ウクライナの事実上の降伏を強いるまで、時間稼ぎを続けることだ。同大統領の手下たちは、汚職スキャンダルに悩まされるウクライナが必然的にこの戦争に敗れるという話を流布するだろう。そうすることで、だまされやすい米国人が、ロシアが領土獲得のために被っている甚大な損失の真実や、ウクライナが適切に武装されていれば侵略者を撃退できるという事実を見逃すことを期待しているのだ。トランプ大統領は、偽りの和平案という致命的な罠に陥ってはならない。


