「人生100年時代」を迎え、60歳を過ぎても働くシニア層は一般的な存在となっている。オースタンスが実施した「シニアの仕事とお金に関する意識調査」によれば、現在仕事をしているシニアは全体の60.0%に上り、半数以上が現役で就労している実態が明らかになった。注目すべきは、彼らの高い労働意欲と、その働く動機が金銭的な理由だけに留まらないという点である。

仮に生活に困らないだけのお金があったとしても、「今のまま働きたい」または「もっと働きたい」と考えているシニアは、全体の約半数(49.5%)に達している。この結果は、シニア層の労働が「生計維持の手段」から「自己実現と社会参加の手段」へと価値観を変容させていることを示している。

実際に、シニアが現在働いている理由をスコア化して見ると、「生活費のため」(482点)が依然として1位であるものの、2位に「人とのつながりを持ち続けたいから」(278点)、3位に「体を動かしていたい・健康のため」(246点)と続いており、非金銭的な価値観が上位を占めている。

しかしその一方で、シニア層が抱える老後のお金に関する不安としては、「病気など医療・介護にかかるお金への不安」が66.6%と最も高く、「突然のトラブル」(48.0%)や「将来の物価上昇や年金制度の変化」(41.8%)など、将来の「何か起きたとき」の備えに対する不安が強い。この不安があるからこそ、シニアは単なる収入源としてだけでなく、社会とのつながりや健康維持といった代替的な価値を仕事に見出しているとも解釈できる。
このような背景から、これからの社会に求められるのは、シニアの経験やスキルを活かし、同時に「人との交流」や「健康増進」といった非金銭的な価値を提供できる、働きがいのある活動の場だ。多様で柔軟な雇用形態や活動機会をいかに創出できるかが、今後の大きな課題となるだろう。
出典:オースタンス「シニアの仕事とお金に関する意識調査」より



