ミーラ・ラジャベル
CIO|パロアルトネットワークス
サイバーセキュリティ大手 Palo Alto Networks(パロアルトネットワークス)のCIOであるミーラ・ラジャベルは、同社内部のセキュリティ態勢を“最初の顧客”として改革する取り組みを進めている。AIデータ、モデル、アプリ、エージェントを保護対象とする「セキュアAIイニシアチブ」を主導し、生成AIを活用したSlackエージェントを導入することで、120以上の雑多な問い合わせチャンネルを一本化。IT・人事向けのAIエージェント「Panda AI」を導入し、ITチケットの70%を自動化した。
ニール・ラマサミ
CIO|コグニザント
ITサービス大手 Cognizant(コグニザント)のCIOであるニール・ラマサミは、3500人規模のIT組織を率いて全社的なAI活用の基盤を構築してきた。過去5年間で150以上のAI機能と80種類のAIエージェントを導入し、数百にのぼるエンタープライズアプリを検索可能な一元ハブへ統合。これは、世界35万人の従業員が日常的に使用する中核プラットフォームになっている。ラマサミのチームは、マイクロソフトやエヌビディアと共同でコグニザントの将来の技術ロードマップを策定し、責任あるAI利用に関する研修を数十万人規模で展開。5万3000人以上の社員が新たなアイデアを持ち寄る「vibe coding」施策も主導している。
ケリー・ロマック
CDIO|サービスナウ
ケリー・ロマックは2024年5月、ITサービス大手ServiceNow(サービスナウ)CDIO(最高デジタル&情報責任者)に就任して以降、社内におけるAI活用の領域を15から200超へと大幅に拡大し、生産性向上を牽引した。それ以前は、2年以上にわたり同社のデジタルエクスペリエンス担当シニアVPを務めていた。
ロマックは、セキュリティインシデントの処理も容易にし、人事関連の手続きもこれまでの20分の1の時間で完了するようにした。営業・マーケティング系のチームは、AIを用いたピッチ資料やキャンペーン作成によって作業時間を大幅に短縮している。
同社は、これらAI統合施策によって年間3億5500万ドル(約554億円)規模の追加価値が生まれたと見積もっている。ロマックは、ServiceNow以前にはヒルトンやウォルマートで20年以上にわたりデジタル技術部門を率いた経験を持つ。
レイ=アン・ラッセル
CIO兼グローバル・ヘッド・オブ・エンジニアリング|バンク・オブ・ニューヨーク・メロン
レイ=アン・ラッセルは、金融サービス大手BNY(バンク・オブ・ニューヨーク・メロン)のCIO兼グローバル・ヘッド・オブ・エンジニアリングを務める。この1年で同社の企業向けAIプラットフォーム「Eliza」の社内展開と活用を一気に加速させた。従業員はこのプラットフォームを使って日々のリサーチを効率化したり、独自のAIエージェントを構築したりできる(「Eliza」という名称は、同社創業者アレクサンダー・ハミルトンの妻、エリザ・ハミルトンに由来する)。
ラッセルの指揮下で、財務情報の検証自動化、決済処理の高速化、営業チーム向けのリード推奨の最適化など、115以上の企業向けAIソリューションが実運用に入った。従業員の34%以上が毎日Elizaを利用しており、彼女が展開した研修プログラムの累計2万6000時間にのぼるAI教育が、その定着に大きく寄与している。BNYはすでに100以上のAI「従業員」を構築しており、これらが数カ月で5万行超のコードを自律的に生成した。
ダニエル・シュメルキン
CIO|Jクルー・グループ
ダニエル・シュメルキンは2019年にアパレルブランドMadewell(メイドウェル)のCIOに就任し、2年後には親会社であるJクルー・グループのテクノロジー全体を統括する役割に昇進。現在は世界で1万2000人超の従業員を支えている。就任後、彼女はデジタル基盤とエンタープライズシステムを刷新し、売上を大きく押し上げたモバイルアプリを立ち上げたほか、ウェブサイトに生成AIベースの検索ツールを導入し、顧客エンゲージメントを2倍に引き上げた。同社は現在、ECエコシステムが売上全体の半分以上を占めていると説明しており、シュメルキンが率いるデータサイエンス組織は、単体で利益とコスト削減を生み出し、自立運営可能な水準に達している。
ジュード・シュラム
CIO|フィフス・サード銀行
ジュード・シュラムは2018年以降、シンシナティ拠点の銀行大手Fifth Third Bank(フィフス・サード銀行)の老朽化したシステムの刷新を主導し、年間約2億ドル(約312億円)の経費削減につなげた。彼のチームは、1万8000人の従業員が余計な手間やコストを減らせるよう、業務プロセスの標準化と簡素化を進めた。同行モバイルアプリは、J.D.パワーの調査で「地域銀行のモバイルバンキングアプリで顧客満足度1位」に選ばれており、この評価を維持するため、シュラムのチームは2024年だけで750件以上のアップデートを実施した。特に、なりすまし被害を防ぎ、不審な活動を通知するセキュリティダッシュボードは、その象徴的な成果となっている。
ミンディ・サイモン
COO|エーオン
ミンディ・サイモンは2022年にプロフェッショナルサービス大手Aon(エーオン)へCOOとして加わって以来、同社のテクノロジー部門を率い、顧客のリスク軽減を支援する製品開発を進めてきた。2025年は、洪水や熱波などの極端な天候が施設やサプライチェーンに与える影響を可視化する「Climate Risk Monitor」を拡張。2年足らずでエーオンのワークロードの80%をクラウドへ移行し、システム統合と運用効率化で3億5000万ドル(約546億円)のコスト削減を実現した。企業がリスクを評価し戦略を検討できる「Risk Analyzer」スイートを立ち上げ、2024年5月のローンチから5つのツールへ拡大している。
レア・ゾンダーレッガー
CIO兼CDO|スワロフスキー
レア・ゾンダーレッガーは、4年前にオーストリアの高級クリスタルブランドSwarovski(スワロフスキー)に加わった。130年の歴史を持つ同社の老朽化したIT基盤を未来に耐えうる構造へ刷新するという大きな課題に直面した。彼女が立ち上げた「Digital Backbone Renovation」プログラムは、企業全体のデジタル中枢を全面再構築し、複雑なレガシーシステムを置き換えている。数千のインフラ部品と数百のプラットフォームのクラウド移行はすでに完了し、アプリケーション構成の簡素化とデジタル事業の拡大につながった。現在、同社のデジタル関連売上は総売上の20%を占めており、プログラムは2026年に予定どおり予算内で完了する見込みだ。
サケット・スリヴァスタヴァ
CIO|アサナ
業務管理ソフトを手がけるAsana(アサナ)でCIOを務めるサケット・スリヴァスタヴァは、過去2年間にわたり多数のAIプロジェクトを主導してきた。その1つが「AI Studio」だ。これは、AIを使ったワークフローを設計できる「バイブコーディング」ツールで、リリース初四半期から売上100万ドル(約1億6000万円)を突破した。スリヴァスタヴァのチームはこのほか、従業員が業務プロセスをより適切に管理し、タスクを自動化できるAIエージェントも導入している。彼は、AIカウンシルや「AI Champions Network」を含むガバナンスモデルを整備し、全社的なAI活用の浸透を進めた。これにより、従業員のAI日常利用率は5月の54%から9月には70%へ上昇し、「大きな生産性向上を実感した」と答える社員の比率も29%から42%へ改善した。直近では、アサナは前年同期比9%の売上成長を記録し、世界有数の大企業との3年契約で1億ドル(約156億円超の大型更新契約も獲得している。
ニティン・タンドン
グローバルCIO兼ITマネージングディレクター|ヴァンガード
ニティン・タンドンは、2021年以降、世界5000万人以上の顧客を抱える資産運用大手Vanguard(ヴァンガード)で、グローバルCIOとして全社的なイノベーションを推進してきた。同社は彼の指揮下でインフラの約90%をクラウドへ移行し、使いやすさと自動化機能が評価された「Digital Advisor」でモーニングスターのロボアドバイザー部門で1位を獲得した。タンドンが主導した取り組みは、投資プロダクトや利用者向けアドバイスの高度化に貢献し、創出価値は5億ドル(約780億円)に到達。顧客の未運用資金62億ドル(約9672億円)を投資へ誘導する効果も生んだ。エンジニアのコーディング時間を27%改善し、ソフトウェア開発全体で最大15%の生産性向上を達成した。
アティラ・ティニッチ
CIO兼SVP|クアルコム
アティラ・ティニックは、世界5万人の従業員を抱えるテクノロジー大手クアルコムに8カ月前に着任したばかりにもかかわらず、初日から全力で成果を出し続けている。全従業員がAIツールを使いこなせるようにする社内認定プログラムを立ち上げた彼は、Microsoft 365 Copilotやクアルコム独自のAIモデルを活用できるスキル習得を全社規模で推進した。従業員のデバイス環境を刷新し、起動速度を5倍に高めバッテリー寿命を向上させたPCを1万5000台以上配備して、ITに対する従業員満足度を10%上昇させ、デバイス関連のヘルプデスク件数も40%減少させた。ティニックはデータセンター基盤から社内デバイスに至るまで、クアルコム全体のエンドツーエンドAI戦略を牽引し、製品と業務の双方にAIを深く組み込む取り組みを加速させている。
セシュ・ティルマラ
CIO|ウエスタンデジタル
セシュ・ティルマラは過去2年間、ストレージ大手ウエスタンデジタルの歴史の中でも最も複雑な技術改革の1つであるフラッシュメモリーおよびSSD部門を新会社SanDisk(サンディスク)として分離し、上場企業として独立させるプロジェクトを率いてきた。18カ月に及ぶ取り組みは、予定より早く、予算内で、業務中断も一切生じさせずに完了し、関連するITの移行サービス契約はすべて12カ月以内に完全に終了させた。ティルマラのチームはAI導入も主導し、社内の新たなデジタルアシスタントの1つは、ローンチから1年未満で従業員の作業時間を累計5万時間以上削減。別のAI検索ツールはサポートチケット数を大幅に減らす効果を生んでいる。
リシ・トリパシ
CISO兼CTO兼SVP|マウントサイナイ・ヘルスシステム
リシ・トリパシはここ2年間、年間収益が110億ドル(約1.7兆円)規模の大手医療機関マウントサイナイ・ヘルスシステム全体で、投資額約1億4000万ドル(約218億円)のIT近代化プロジェクトを主導してきた。彼の指揮によって、各種AIセキュリティツールを駆使した脅威検知とインシデント対応が強化され、セキュリティ脆弱性は60%削減、インシデント対応時間は45%短縮された。トリパシは、臨床・研究・運営など各部門でワークフローを自動化するAIプログラムを導入し、データセンターの半数を統合するとともに、200以上のレガシーシステムを廃止。これらの取り組みにより、年間400万ドル(約6億2000万円)のコスト削減を実現した。


