サム・キニ
グローバルCIO兼CISO|ユニリーバ
世界最大級の消費財メーカーであるユニリーバに2021年に加わったサム・キニは、同社を完全なクラウドベースの企業へと移行させるインフラ改革を率いてきた。これは全社のITを一本化し、AI導入に耐えうる基盤を整え、サイバーセキュリティ体制を刷新する「One Technology」戦略の中心的プロジェクトだ。これまでに、この計画によるコスト削減額は1億ポンド(約207億円)に達した。キニは、従業員のAIスキル向上にも注力しており、年末までに世界で2万5000人超を訓練する見込みとなっている。
メラニー・カークウッド・ルイス
CITO|ABMインダストリーズ
メラニー・カークウッド・ルイスはここ数年、オフィス管理サービス大手ABMインダストリーズのテクノロジー部門をCITO(最高情報・技術責任者)として率いてきた。同社は清掃、設備管理、電気・照明、駐車場運営、造園など幅広いサービスを手がけ、世界で2万社超の顧客を抱えている。ルイスのチームは、10万人超の従業員と1万社の顧客が移動中でもコミュニケーションできる職場向けアプリ「ABM Connect」を立ち上げた実績を持つ。彼女は、米国最大規模の家族経営ビル管理会社Able Servicesを15億ドル(約2340億円)で買収した際のテクノロジー統合作業も主導した。ルイスのチームが導入したデータ活用型のスマート駐車ソリューションは、ロサンゼルス国際空港で駐車場の利用率を28%増やし、渋滞を35%減少させたと同社は説明している。
デーン・クネヒト
CTO|クラウドフレア
米コンテンツ・デリバリー・ネットワーク(CDN)大手Cloudflare(クラウドフレア)に13年前に入社したデーン・クネヒトは、2025年3月にCTOへ昇格した。それ以来彼は、開発者が安全かつ低コストでインテリジェントエージェントを構築できるソフトウェアの実装を進めてきた。これには、社内のAIシステムを同社のデータソースや各種ツールと安全に接続するためのプログラムや、エージェント開発の能力を高める目的で4月に実施した開発者向けデータベース企業Outerbaseの買収が含まれる。現在クネヒトは、2026年に1111人のインターンを採用するという同社の新たな取り組みも牽引している。
ジェイソン・ラウ
CISO|クリプトドットコム
ジェイソン・ラウは、暗号資産取引所Crypto.com(クリプトドットコム)のCISOとして、セキュリティとオペレーションの高度化を進めている。この役職に就任して以降の8年間で、100件超のワークフローを自動化するAI主導のセキュリティ運用改革を実行し、年間120万ドル(約1億9000万円)のコスト削減につなげた。
彼は、同社のソフトウェアに潜む欠陥を悪用される前に発見した人へ報奨金を支払う総額200万ドル(約3億1000万円)の業界最大規模のバグバウンティプログラムも立ち上げた。ラウの指揮下で、クリプトドットコムは世界の暗号資産取引所として初めて複数の主要セキュリティ認証を取得した。社外ではAIサイバーセキュリティ資格の第1号となる認定制度の策定に関与し、IT専門職向けに資格・教育を提供する情報システム監査・統制協会(ISACA)の取締役も務めている。
ピーター・ラドウィグ
CTO兼共同創業者|アプライド・インテューイション
ピーター・ラドウィグは、自動運転ソフトウェア開発向けプラットフォームを手がけるApplied Intuition(アプライド・インテューイション)でCTOを務め、同社の技術戦略全体を率いている。彼は、米国防総省や同盟国軍が自律走行システムを効率的に構築・試験・配備できるようにする複数のソリューションの立ち上げを主導した。これら製品には、最新のAIおよび機械学習技術を、高リスク環境向けの安全要件と組み合わせるアプローチが求められる。ラドウィグは、同社が開発した自動駐車ソリューションのローンチも統括した。この技術は、車両を従来より最大12倍速く自動で駐車させ、コストを最大70%削減しつつ、周囲環境の検知能力を向上させた。
マイク・マレスカ
CTTO|ウルタ・ビューティー
マイク・マレスカは過去2年間、米国最大の美容・コスメ小売企業であるウルタ・ビューティーのCTTO(最高技術・変革責任者)として、既存システムの刷新と基幹業務の自動化を、日常業務に影響を与えずに完遂する大規模なIT改革を率いてきた。これにより、ネットワーク障害は89%減り、購買プロセスの処理速度が向上し、ホリデー商戦のピーク時でも1分あたり1000件超の注文をダウンタイムなしで処理できるようになった。マレスカは、同社のエンタープライズデータ基盤「DARWIN」を立ち上げ、分析、機械学習、AIイニシアチブを支える土台を整備した。この基盤は現在、リアルタイムの製品レコメンド、補充通知、AIによるバーチャル試着など、同社のパーソナライズ技術の中心を担っており、同社はこれら取り組みが1億2600万ドル(約197億円)超の増収につながったと説明している。
ラサ・マリプリ
CISO兼VP|ウーバー
ラサ・マリプリは2021年以来、ウーバーのCISOとして、グローバルのサイバーセキュリティとプライバシーエンジニアリングを統括している。彼女のチームはAIによる検知システムを導入し、潜在的なサイバー脅威の特定件数を前年から140%以上増やし、実際のセキュリティインシデントも大幅に減らした。
データベース防御にAIを導入し、製品設計の自動セキュリティレビューも実施した。AIを軸に据えた防御戦略を掲げる彼女は、全社での責任あるAI活用の推進役も担っている。
ショーン・マコーマック
CIO|ファースト・スチューデント
ショーン・マコーマックは過去4年間、北米最大のスクールバス運行企業First Student(ファースト・スチューデント)のCIOとしてデジタル変革を主導してきた。同社は米国42州とカナダ8州で4万6000台の車両を運行しており、彼の指揮下で、オペレーション、リスク、財務の機能を統合するAI基盤を構築した。これにより、予測分析を用いた車両整備の計画や各種業務の最適化が可能となり、550万人の学生を安全かつ効率的に目的地へ運ぶ運行体制を実現した。彼は、電動スクールバスに関連するIT施策も統括し、持続可能な交通のために6億ドル(約936億円)の助成金を獲得。2024〜2025年度には1万2550トンのCO2削減も達成した。
ベス・マコーマック
CIO|カバ
ベス・マコーマックは、地中海料理のファストカジュアルチェーンCAVA(カバ)のCIOとして、店舗間の情報連携を支えるデータ基盤の整備を担ってきた。彼女は、2024年度に367店舗で合計9億5430万ドル(約1489億円)の売上を記録した各店舗が扱うデータを単一のクラウドプラットフォームに統合する取り組みを主導した。これにより、店舗マネジャーはより迅速かつ的確な判断ができ、週単位で多くの作業時間が削減された。この基盤整備により、厨房の状況を把握しシェフに適切な情報を返すAIカメラの導入など、今後の新たなテクノロジー活用にも対応できる体制が整った。
シアーズ・メリット
CIO|マスミューチュアル
シアーズ・メリットは2013年に保険大手MassMutual(マスミューチュアル)に主任データサイエンティストとして入社した際、同社でデータサイエンスを担当する唯一の人材だった。11年が経った現在、彼は経営陣の一員として全社の業務にデータ、機械学習、AIを組み込む役割を担っている。メリットは、オンラインのがん早期検知ツール、健康習慣を促すインセンティブプログラム、AIによるメンタルヘルスアプリなど、複数のデジタルプロダクトを含むデジタル・ウェルネスプログラムの立ち上げを主導した。2023年のローンチ以降、これらサービスは延べ90万人超の顧客が利用している。彼は全社的なAI活用も後押ししており、すでに従業員の約40%がマイクロソフトのCopilot、Zoom AI Summary、GitHub Copilot などのAIツールを日常的に使用している。2025年末までに、この利用率を50%へ引き上げることを目標としている。
ハイメ・モンテマヨール
CDTO|ゼネラル・ミルズ
ハイメ・モンテマヨールは、大手食品メーカー、ゼネラル・ミルズのCDTO(チーフ・デジタル&テクノロジー・オフィサー)だ。2018年以降にデータサイエンスチームを40倍の規模へ拡大し、同社のシステムを事業に影響を与えることなく全面的にクラウドへ移行した。この取り組みにより、データの正確性は96%へ向上し、データ活用とAI導入を全社的に加速できる統合フレームワークが整った。とりわけ象徴的なのは、ゼネラル・ミルズの物流システムを小売大手のプラットフォームと接続し、主要顧客の発注25万件超をAIで自動処理できるようにしたことだ。この施策だけで(数億円)規模の輸送コストが削減され、二酸化炭素排出量は5000トン削減され、注文管理の処理時間は18時間から30分に短縮された。
パラーグ・パレック
CDO|イケア
パラーグ・パレックは、家具小売大手イケアでCDO(最高デジタル責任者)を務める。過去3年間、実店舗での製品・体験とデジタル技術を融合させる取り組みを主導し、没入型3Dキッチンプランニングソフトや、オンラインと店舗体験をつなぐAIツールを導入した。3万人以上の従業員にAIリテラシー研修を実施し、レストラン部門のフードロス削減や配送ルート最適化を行うAIツールの展開を通じ、サステナビリティ目標の達成にも貢献した。
ダンジ・プラサンナ
CTO|ブロック
フィンテック大手 Block(ブロック)のCTOを務めるダンジ・プラサンナは、3年前の入社以来、同社の技術基盤の進化を牽引してきた。特に、2年前に現職のCTOへ昇進してからは、AI主導の技術戦略を一気に加速させ、「Goose」と呼ばれる大規模オープンソースAIエージェント基盤の開発を主導した。この基盤は、Databricks、Snowflake、Anthropic、Stripeといった外部企業のエンジニア数千人が活用するまでに成長し、ブロック社内でも約1万人の従業員のうち約3分の2が利用。毎週数万時間規模のマニュアル作業削減につながっている。モバイル決済、Cash Appカード、銀行・暗号資産サービスなど同社の多様なプロダクトを技術面から支えてきたプラサンナは、現在もAIを中心に据えた次世代アーキテクチャへの転換を率いている。


