アシュリー・デボート
CISO|ディスカウント・タイヤ
アシュリー・デボートはこの2年間、タイヤとホイールの大手小売企業Discount Tire(ディスカウント・タイヤ)でサイバーセキュリティ運用を統括し、3万人の従業員と1200店舗にまたがる戦略を一元化してきた。現在は、過去20年の同社で最大規模となる1億7500万ドル(約273億円)の近代化プロジェクトを主導し、販売プロセスに強固なセキュリティを組み込む取り組みを進めている。M&A など事業拡大の局面では、サイバーセキュリティを最優先事項として組み込むことで、11部門の成長を支えている。デボートは以前、サイバーセキュリティ企業 CISO Global(シーアイエスオー・グローバル)の社長兼CISOを務め、米空軍で10年以上にわたりサイバー作戦に従事してきた。
マイケル・エルモア
CISO|GSK
マイケル・エルモアは、この3年間、製薬大手GSKで科学的な挑戦とデジタル信頼を両立させる役割を担ってきた。彼は1億3500万ドル(約211億円)を投じ、120件を超える新規プロジェクトや採用強化を進めながら、同社のサイバーセキュリティ体制の構築を主導した。たとえば、侵入後にネットワーク全体へ攻撃を広げるリスクを70%低減するセキュリティ対策を導入し、データプラットフォームを単一ダッシュボードに統合して、AIによるシミュレーションで脆弱性を発見できるようにした。エルモアは、AI教育を行う非営利団体 Global Council for Responsible AI と連携し、GSK内部で透明性のあるAI利用を進める基盤づくりにも取り組んでいる。
ケリー・フレッチャー
CIO|米国務省
米国務省CIOを務めるケリー・フレッチャーは、190カ国で10万人以上が利用するテクノロジー環境の構築と運用を担っている。2024年8月には、生成AIチャットボット「StateChat」を職員向けに導入し、政策文書の検索を高速化し、文書の形式整備を自動化し、100以上の言語で翻訳・要約を行うことで、事務作業の負担を大幅に軽減した。2024年は、オンラインパスポート更新サービスの立ち上げにも関わり、数百万人の米国民が書類や写真を郵送せずに新しいパスポートを取得できるようにした。しかし、彼女の最も大きな成果は、2023年に起きた中国系ハッカーによるマイクロソフトのクラウド環境侵害への対応だ。20以上の機関が被害を受けたなかで、異常な活動を正確に察知したのは唯一国務省だけであり、迅速な通報によって利用者データの追加流出を防ぐことに成功した。
スティーブン・フランケッティ
CIO|サムサラ
スティーブン・フランケッティは、フリート管理プラットフォームを手がけるSamsara(サムサラ)の初代CIOだ。同社が売上1億ドル(約156億円)規模の非上場企業から年商16億ドル(約2496億円)の上場企業へ成長する過程を支えてきた。彼が導入したAIツールは、サポートのチケット件数を59%削減し、ヘルプデスクの対応時間を27%短縮し、AIによるコード生成の支援でエンジニアリングチームの生産性も引き上げた。営業チーム向けに導入したAIチャットボットは、データ抽出と解釈を自動化することで生産性を16%向上させた。彼は、社員がAIを安全かつ効率的に活用できるよう、全社的な利用促進プログラムの立ち上げも進めている。
アン・フナイ
CIO兼ビジネスプラットフォーム変革担当VP|IBM
アン・フナイはIBMでキャリアをスタートし、20年間にわたりITとソフトウェアシステムを管理した。その後、PeopleAdmin(ピープルアドミン)、MyFitnessPal(マイフィットネスパル)、アンダーアーマーを経験。2年前にIBMへ復帰し、マット・ライトソンCIOとともに、AI時代に向けた体制づくりを進めている。
その指揮下においてIBMは、15万人以上のユーザーをクラウド型の社内プラットフォームへ移行し、運用効率を大幅に改善した。これにより、インフラ関連コストは30%削減され、請求処理のサイクルは80%短縮され、新規契約登録にかかる時間も40%短縮された。カスタムコードの必要性を25%削減し、将来のアップグレードを容易にした。彼女のチームは、人事担当者向けに80以上の業務を自動化する社内AIエージェント「AskHR」を導入し、年間210万件以上の社内の問い合わせに対応している。
カート・ガーナー
CSO兼CTO|チポトレ
カート・ガーナーは10年前にファストカジュアル大手チポトレに加わって以来、同社のデジタル部門を数十億ドル(数千億円)規模の成長エンジンへと押し上げる役割を担ってきた。アプリとウェブサイトを刷新し、Doordash(ドアダッシュ)やUber Eats(ウーバーイーツ)とのデリバリー統合を進め、2000万人超が利用するリワードプログラムを立ち上げた。2024年はこれを発展させ、大学生向けのロイヤルティプログラム「Chipotle U」もローンチした。チポトレのデジタル注文は2015年の売上比5%から、現在は35%以上を占めるまでに成長している。彼は、AI企業 Paradox(パラドックス)と組んで人事向けバーチャルアシスタント「Ava Cado」を開発し、店舗マネージャーの採用プロセス全体を75%短縮し、応募者の申込完了率を50%から85%以上へ引き上げた。
アルバロ・ガリード
CIO兼COO|スタンダードチャータード
アルバロ・ガリードはここ数年、ロンドン拠点の国際金融大手スタンダードチャータードのサイバーセキュリティ戦略を抜本的に刷新してきた。AI駆動の分析基盤やアダプティブ検知を取り入れることでリスクを低減し、分散していたセキュリティ機能を1つのシステムへ統合した。彼は、組織全体のサイバーリスクを行動分析で定量化する独自のフレームワーク「Cyber Culture Quotient」を確立した。ガリードのチームは、これまでにフィッシング攻撃100件超を無力化し、大規模インシデントの検知時間も40%短縮。その結果、クレジットカード不正の特定と対応は36倍の速度で行えるようになった。2025年は、約8万人の従業員が利用する手続き自動化ツール「SC GPT」のグローバル展開も主導し、ソフトウェア開発の効率化につなげている。
ロザリア・ヘイエク
CISO|トップゴルフ・キャラウェイ・ブランズ
ロザリア・ヘイエクは、テクノロジーを活用したゴルフ関連事業を展開するTopgolf Callaway Brands(トップゴルフ・キャラウェイ・ブランズ)でグローバルCISOを務め、事業継続計画と災害復旧の仕組み全体を再設計し、現代化を進めてきた。彼女の主導で策定したサイバーセキュリティ対策ガイドラインにより、同社は重要システムの100%復旧を可能にする体制を構築した。
ヘイエクは、約20テラバイトに及ぶ重要データを整理しタグ付けしたうえで、どのデータが全社的に機密かつ不可欠なのかを明確にする内部分類モデルを導入。これによりAIモデルの学習に最適なデータ基盤が整備され、責任あるAI運用の土台となった。このモデルは、潜在的なリスクを70%減らし、AI関連の取り組みを60%以上加速させている。
ジョエル・ヘロン
CTO|トムソン・ロイター
トムソン・ロイターが2022年にAI文書解析スタートアップThoughtTrace(ソートトレース)を買収した際、同社はCTOのジョエル・ヘロンも迎え入れた。以来ヘロンは、法律、税務、リスク管理の専門家向けに生成AIを活用したリサーチ・検証ツールを複数立ち上げ、安全性フレームワークの整備も進めてきた。自身のスタートアップでの経験を生かし、トムソン・ロイターのM&A戦略を設計。買収先が少なくとも1年間は内部目標を維持できるようにする新方針を導入したことで、統合プロセスの精度が向上した。トムソン・ロイターは彼の参画後に約32億ドル(約4992億円)を投じて、Casetext、Materia、Safe Sign、Additive、SafeSend、SurePrep、Pageroなどの企業を買収しており、ヘロンが策定した統合ガイドラインがその成功を支えたと評価されている。
ナイル・ジョンストン
CIO兼SVP|エイチピー
HP(エイチピー)のCIOを務めるナイル・ジョンストンは2023年、同社初の顧客サポート向けAIエージェントを導入した。年間1900万件のサポート案件を処理し、そのうち78%をAIだけで完了させ、ローンチから2カ月で顧客満足度92%を達成した。これにより従業員は、より難易度の高い顧客対応に専念できるようになった。ジョンストンのチームは、AIを用いたモデルでアプリケーションテストの80%を自動化し、テスト関連コストを50%削減した。2025年は、社員が日常的に使うアプリや技術ツールの数を23%削減し、業務の効率化を進めた。社員向けの導入支援やソフトウェア更新の体験改善によって、従業員満足度も前年の53%から2025年は70%へと向上させた。
ゴピ・ジョシ
ペイメントネットワーク部門CTO|マスターカード
ゴピ・ジョシは、マスターカードでの20年にわたるキャリアを通じ、年間1600億件にのぼる同社の決済処理を確実に遂行する責任を担ってきた。2025年2月には、150超の通貨・220地域でリアルタイムの即時決済を可能にする「Mastercard Transaction Stream」プラットフォームを設計・展開した。彼は、レガシーシステムと新プラットフォームの双方で同時にトランザクションを処理できるAI駆動のリスク管理テストを導入することで、この移行を実現した。この取り組みは、マスターカードの中核となる決済ネットワークに数十年ぶりの大規模なアーキテクチャ改革をもたらし、ジョシはその功績でMastercard CEO Awardを受賞した。
キャシー・ケイ
CIO兼EVP|プリンシパル・フィナンシャル・グループ
キャシー・ケイは、金融サービス大手のプリンシパル・フィナンシャル・グループのCIOとして、投資リサーチ、コード品質の改善、不正検知など100以上のユースケースでAIを導入してきた。その結果、同社のエンジニアの97%が生産性向上を報告し、61%が「コード品質が改善した」と回答している。社内向けAIアシスタントも立ち上げて全社的に拡張し、現在では8500人超が利用している。利用者は、コンテンツ作成、ドキュメント作成、リサーチなどで最大50%の時間削減を報告している。彼女は、約5000人の従業員にAIとデータリテラシーの研修を実施し、全社で責任あるAI活用を推進する「AIセンター・オブ・エクセレンス」も設立した。


