ビットコインの値上がりに企業戦略のすべてを賭け、その前提で投資家を集めてきた企業にとって、1カ月で35%の急落(米国版掲載時)は重大な警告を意味する。
ビットコインは先週、10月のピーク時の12万6080ドル(約2000万円。1ドル=156円換算)を35%下回る8万2000ドル(約1300万円)にまで急落した。このニュースは、ほとんどのナスダック上場企業にとって雑音に過ぎないが、ビットコイン強気派として最も有名で、企業として最大の保有者、マイケル・セイラー率いる「ストラテジー」にとっては、すぐさま「次に何が起きるのか」という疑念を呼ぶものとなった。
時価総額が保有ビットコインの価値を下回り、株価は1年で60%下落
ストラテジーの時価総額は、過去2年のほとんどの間、保有するビットコインの価値を大きく上回ってきた。その差は時に190%にも達し、同社株への投資は、機関投資家にとって“ターボチャージされたビットコインへの賭け”になった。マイケル・セイラーは、バージニア州タイソンズに拠点を置くかつて「マイクロストラテジー」と呼ばれたデータマイニング系ソフトウェア企業を、従来の企業金融を駆使してビットコインのボラティリティを利用する企業へと変貌させた。その結果、デジタル資産トレジャリー(DAT)と呼ばれる同様の手法をまねる上場企業が数百社も生まれ、セイラー自身の純資産も2022年の16億ドル(約2496億円)から54億ドル(約8424億円)へと膨らんだ。
しかし、そのプレミアムが消え失せた現在、ストラテジーの株価はここ1年で60%下落した。同社の時価総額は490億ドル(約7.6兆円)まで縮小し、保有するビットコインの価値の560億ドル(約8.7兆円)を下回っている。
S&Pによる格下げや主要指数からの除外リスクが、資金流出を招く恐れ
大手格付け会社S&Pグローバル・レーティングは先月、ストラテジーの信用格付けをジャンク債領域の「B-」とし、「ビットコインへの過度の集中、事業の狭さ、リスク調整後の資本の弱さ、ドル建て流動性の乏しさ」を弱点に挙げた。JPモルガンのアナリストも最近のノートで、ストラテジーがMSCI USAやナスダック100など主要指数から外れるリスクを警告した。もしMSCIが除外に踏み切れば、最大28億ドル(約4368億円)が同社株から流出する可能性があり、他の指数提供会社が追随すれば資金流出が膨らむ恐れがある。
ストラテジーに連動するパッシブファンドは約90億ドル(約1.4兆円)のエクスポージャーを抱えている。指数から外されれば強制的な売りが発生するだけでなく、同社株の大きな魅力だった高い出来高も失われ、流動性が急速に細る可能性がある。また、ストラテジーは2四半期連続でS&P500の採用基準を満たしているものの、組み入れは実現しておらず、ビットコインを巡る逆風を考えれば今後も採用は期待しづらい。



