2020年代に入り、パーパス(企業の社会的意義)は、企業にとって定番のスローガンとなった。今や、ほぼすべてのリーダーたちによるオフサイトミーティング(オフィス以外の場所に集まって行なう戦略会議)や年次報告書では、「(社員の)生活の質を上げる」「世界に変化をもたらす」といった、大きなパーパスを掲げた宣言が打ち出されている。
こうした宣言は、言葉遣いこそ現場を鼓舞するかのようだが、実際に社内を見てみると、むなしく響くように感じられる企業も多い。従業員は大言壮語を耳にしているものの、日々のオフィスでの行動にはほとんど変化を見いだせないでいる。
実際のところ、大半の企業はパーパスを「自ら構築するもの」ではなく、何らかの形で「見つかるもの」であるかのように扱い、追い求めているのが現状だ。パーパスを起草し、ブランディングし、ポスターとして壁に貼れば、従業員がこのお題目のもとに結集してくれると期待しているのだ。
しかし、「スローガンの中にだけ存在しているパーパス」では、モチベーションは維持できない。仕事が再びルーティンのように感じられるようになった瞬間に、こうしたパーパスは色あせてしまう。
企業のリーダーは、パーパスの真の役割を誤解している。パーパスは、マーケティングの道具でも、社員の士気を高める特効薬でもない。それは、調整のためのシステムだ。パーパスは、個々の社員の努力をつなげ、集団での意義ある成果につなげることに役立つ。このような、あいだを取り持つ取り組みが欠落していると、どれだけ美辞麗句を並べたミッションステートメントも瓦解し、ノイズの中に埋もれてしまう。
最も信頼されるリーダーは、パーパスについて語るだけでなく、行動を通じて自らパーパスを作り出していく。ミーティングや意思決定、細々とした毎日のシグナルの中にパーパスを組み込み、本当に重要なことを部下に伝えていくのだ。



