数ヶ月に渡り災害級の酷暑が続いたかと思えば、一転して急な冷え込みが訪れたりと、今年は気温差の大きい日が続いた。体調不良をはじめ、疲れやすさや気分の落ち込みなど、自律神経の乱れを思わせる症状を訴える人も周囲に増えている。こうした気候の揺らぎと健康との関係は、個々の体感にとどまらず、医療界でも重要なテーマになりつつあるようだ。
先日、特定非営利活動法人『日本医療政策機構(HGPI)』が医療系の学術団体・職能団体・産業団体をまとめて調査対象にし、「気候変動と健康に対する意識や行動」について調査を実施した。その結果、日本の保健・医療団体の多くが気候変動を健康課題として認識している一方で、知識や教育、具体的な対策が著しく不足しているという実態が明らかになった。
【調査概要】
調査内容:気候変動と健康に関する各意識や行動の現状
調査期間:2025年10月3日~10月28日
調査方法:オンライン形式(自記式質問紙)
調査対象:医療系学術団体、職能団体、製薬・医療機器などの産業団体で実施、計152の有効回答
9割が「気候変動は健康に影響している」と回答
すべての団体で、気候変動が発生していること、そのことが健康に悪影響を及ぼすという認識が 9割以上を占めた。一方「保健医療分野が温室効果ガス排出について何らかの貢献ができるか」については団体間で認識の差があり、学術団体では貢献度を低く見る傾向があった。

全体的に目立つ「知識の不足」
また、気候変動による健康への影響や国際的な動向について「ほとんど知らない」「あまり知らない」と回答した団体が多く、とりわけ学術団体・産業団体で知識不足が目立った。一方、医療機関を担う職能団体は「気候変動への適応策」「緩和策に対する知識」の理解度が比較的高く、他のカテゴリーに比べて知識レベルが高い結果となった。

教育と対策はこれから
また、所属会員への生涯教育や市民啓発の実施率は全カテゴリーで低い水準にとどまった。特に学術団体では9割以上が「実施なし・準備なし」と回答しており、教育体制の不備が明らかになった。同時に、気候変動への具体的な対策や、生物多様性の喪失対策についても具体的な策定・公表をしている団体も少数派にとどまった。




