宇宙

2025.11.26 09:30

史上3例目の恒星間天体「3I/ATLAS」が完全に自然の彗星である論理的な理由

欧州宇宙機関(ESA)の火星探査計画エクソマーズ(ExoMars)の無人周回機トレース・ガス・オービター(TGO)が2025年10月3日に火星の近くを通過した恒星間彗星3I/ATLAS(中央の白点)を撮影した画像(ESA/TGO/CaSSIS)

欧州宇宙機関(ESA)の火星探査計画エクソマーズ(ExoMars)の無人周回機トレース・ガス・オービター(TGO)が2025年10月3日に火星の近くを通過した恒星間彗星3I/ATLAS(中央の白点)を撮影した画像(ESA/TGO/CaSSIS)

論理的に見て、恒星間彗星3I/ATLAS(アトラス)は、宇宙人の母船のようなものでもなければ、待機中の「トロイの木馬」でも、友好的な宇宙人の探査機でもない。

3I/ATLASは自然物であり、「建造物」との見方を裏づけるデータはなく、確認されているのは教科書通りの彗星の挙動だと、NASAジェット推進研究所(JPL)のベテラン天体物理学者スラヴァ・トゥリシェフは、取材に応じた電子メールで述べている。

トゥリシェフの説明によると、3I/ATLASを撮影した画像には彗星のコマ(頭部の明るい領域)と塵の尾(ダストテイル)が写っており、軌道は星間空間からの明確な双曲線で、不連続性や「噴射」はなく、脱ガス(ガスの噴出)に由来すると考えられる非重力加速がわずかにあるだけだ。

だが、なぜこの特異な彗星が完全に自然物なのかに関しては、純粋に論理的な理由がいくつかある。

これほど巨大な物体を何光年にもわたる時空を超えて送り込むことが可能な宇宙人の文明なら、地球に忍び寄るのに奇妙な形をした彗星に見せかけて身を隠す必要などまったくないのだ。

彼らはロボット探査機を送り込むためのワープ航法をはるか昔から使いこなしているだろう。ちっぽけな太陽系を横断するのに何カ月もかける必要はないと思われる。1996年公開のSF映画『インデペンデンス・デイ』のように、一瞬のうちに地球に現れるだろう。

その理由は、地球外文明が人類と偶然遭遇するならば、人類よりはるかに進んだ文明である可能性が高いからだ。地球外知的文明探査(SETI)の数十年にわたる探査活動の指針となっているのが、この論理だ。人類がほぼ同等の科学技術を持つ地球外文明と遭遇する可能性は統計的に非常に低いと、SETIは主張している。

電波や光を介して、もしくは現時点では想像できないような別の手段により、人類とファーストコンタクト(最初の相互接触)する相手の地球外文明は、少なくとも人類より数十万年進んでいる可能性が高いと、SETIは考えている。

もしかすると人類より数百万年、あるいは数十億年も進んでいるかもしれない。

高度な地球外文明

人類がファーストコンタクトする地球外文明の科学技術力が、SFテレビシリーズ『スタートレック』に登場する高度知的生命体Qの半分だとしても、彼らはすでに地球に来ていて、あなたの妹とデートしているかもしれない。そして誰もそれに気づかないだろう。

彼らの技術力は、人類にはほとんど神業のように見えるに違いない。

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翻訳=河原稔

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