宇宙

2025.11.26 09:30

史上3例目の恒星間天体「3I/ATLAS」が完全に自然の彗星である論理的な理由

欧州宇宙機関(ESA)の火星探査計画エクソマーズ(ExoMars)の無人周回機トレース・ガス・オービター(TGO)が2025年10月3日に火星の近くを通過した恒星間彗星3I/ATLAS(中央の白点)を撮影した画像(ESA/TGO/CaSSIS)

中国の観測

中国国家航天局(CNSA)の報告によると、中国の火星探査機「天問1号(Tianwen-1)」が最近、搭載の高解像度カメラを用いて3I/ATLASを観測した。

advertisement

3I/ATLASは、天の川銀河(銀河系)の中心付近にある古代の星々の周辺で形成された可能性が高く、推定年齢は30億~110億年で、おそらく太陽系より古いだろうと科学者は考えているという。これにより3I/ATLASは、太陽系外惑星の化学組成と進化および恒星の歴史の初期段階を調査する上で希少なサンプルとなると、CNSAは指摘している。

恒星間彗星3I/ATLASの経路(白矢印)を示した解説画像。赤は火星、青は地球の公転軌道で、白矢印上の青点は3I/ATLASの2025年7月1日の位置、赤点は10月3日の火星通過時、白点は10月30日の近日点通過直後、紫点は11月25日に到達する位置をそれぞれ表している(ESA)
恒星間彗星3I/ATLASの経路(白矢印)を示した解説画像。赤は火星、青は地球の公転軌道で、白矢印上の青点は3I/ATLASの2025年7月1日の位置、赤点は10月3日の火星通過時、白点は10月30日の近日点通過直後、紫点は11月25日に到達する位置をそれぞれ表している(ESA)

NASAのジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)による3I/ATLASの分光観測では、揮発性物質を豊富に含む彗星のコマが検出されている。コマの主成分は二酸化炭素(CO2)で、他に水や一酸化炭素(CO)、氷や塵(固体微粒子)が含まれている。

3I/ATLASは太陽系の彗星の多くと比較して化学組成的に異質だが、明白に彗星であり、金属類には適合しないと、JPLのトゥリシェフは説明している。

advertisement

結論

トゥリシェフによると、報告されている「加速」はすべて、近日点近くでの脱ガスと辻褄が合う。これは通常の彗星に対してモデル化されているのと同じ物理現象だ。経路にも速度にも残差(軌道の観測値と計算値との差)にも、工学技術を示唆する要素はまったくないと、トゥリシェフは述べている。

銀河系のこの宇宙域内に存在する知的文明は人類だけではないという可能性を、私たちは受け入れる必要がある。実際に、太陽系には45億6000万年の歴史の中で、何らかの宇宙人の探査機が訪れたことがあったかもしれない。だが、3I/ATLASはその1つではない。

forbes.com 原文

翻訳=河原稔

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事