宇宙

2025.11.26 09:30

史上3例目の恒星間天体「3I/ATLAS」が完全に自然の彗星である論理的な理由

欧州宇宙機関(ESA)の火星探査計画エクソマーズ(ExoMars)の無人周回機トレース・ガス・オービター(TGO)が2025年10月3日に火星の近くを通過した恒星間彗星3I/ATLAS(中央の白点)を撮影した画像(ESA/TGO/CaSSIS)

現在知られている物理学がすべてだと思い込んでいる、巷に存在するすべての超保守的な物理学者には、人類が暮らす宇宙について未だにほとんど理解できていないことを思い出してほしい。

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理論物理学者は今日、この宇宙の大部分が(どちらもいまだ正体不明の)暗黒エネルギーと非バリオン暗黒物質で構成されていると考えている。故ドナルド・ラムズフェルド元米国防長官の言葉を借りれば、宇宙の物理に関して人類が持っている現在の知識は「わからないということがわかっている(known unknowns)」ことを示すと同時に「わからないということがわからない(unknown unknowns)」ことさえも表しているのかもしれない。

人類の科学技術力に匹敵する地球外文明は存在するだろうか。

おそらく、車輪を発明したり太陽帆(ソーラーセイル)などの技術を開発したりしている地球外文明は存在するに違いない。だが、もし彼らの技術的発展がこの程度だとすると、地球に現れる可能性は低い。

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人類が懸念すべきなのは、非常に高い効率と速度で時空を超える移動技術をすでに使いこなしている地球外文明だけだ。

人類自身の技術的進歩は目覚ましいものの、今なお赤子も同然なのだ。


進歩の100年

動力飛行に成功してから100年、粗末な電子計算機を初めて開発してから100年近くを経て、人類は今や、航空機をレーダーに実質的に見えないようにできる技術や、本物か否かの識別がほぼ不可能なように人工的な風景を作成できる人工知能(AI)を持っている。

2022年のノーベル物理学賞を受賞したオーストリア人物理学者で、量子コンピューティングの第一人者のアントン・ツァイリンガーに、筆者は30年前にインタビューをした。その当時、量子コンピューティングはごく初期の段階にあった。

今日、量子コンピューティング技術を商業化すると見込まれる企業の将来性はウォール街の垂涎の的となっている。来るべきパラダイム変化により、今日の情報技術は相対的に極めて時代遅れに見えるようになるはずだ。

だがそれでも、人類のか弱い社会が過去30年間で何を達成できたか、そして発達が遅れた地球外文明が1000年で何ができるだろうかを、考えてみてほしい。

人類のAIはまだ誕生から1世代足らずといえるだろう。この地球で人類が抱いているのと同様の科学的な好奇心と意欲を持ち、地球に似た惑星で繁栄できた文明が自滅しなかったとすれば、何ができるだろうかと想像してみよう。彼らは10万年もしないうちに宇宙を思いのままに移動しているかもしれない。

それ故、高度な地球外文明が実行する必要性が最も低いと考えられるのは、光速に近い速度で旅をし、巨大な彗星を装って身を隠すことなのだ。

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翻訳=河原稔

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