ネットフリックスがオリジナルの番組や映画を大量に投入し、当たりを狙って「ショットガン」のように撃ちまくっていることを、筆者はしばしば手厳しく批判してきた。しかし現在、同社が配信しているオリジナル長編映画が、映画評論サイトのロッテントマト(Rotten Tomatoes)で156件を超えるレビューを集め95%のスコアを獲得し、まさに今年最高得点の作品の1つとなっている。
その映画とは『トレイン・ドリームズ』(Train Dreams)だ。普段は助演に回ることの多いジョエル・エドガートンが主演を務める。デニス・ジョンソンの2012年の中編小説を原作とし、今回これが見事な映画に仕上げられた。以下は概要である。
『トレイン・ドリームズ』は、20世紀初頭のアメリカという未曾有の変化の時代に生きたロバート・グレイニア(ゴールデングローブ賞ノミネートのジョエル・エドガートン)の、心揺さぶる人物像を描く。幼くして孤児となったロバートは、太平洋岸北西部のそびえ立つ森林の中で大人へと成長し、そこに暮らす風景と同じくらい忘れがたい男たちと肩を並べ、国の鉄道帝国の拡張に従事する。やがて慎ましい求愛を経て、彼はグラディス(アカデミー賞ノミネートのフェリシティ・ジョーンズ)と結婚し、2人は家庭を築くが、仕事のため彼はしばしば妻と幼い娘のもとを離れねばならない。彼の人生が思いがけない方向に転じるとき、ロバートは自らが倒してきた森と木々に、美しさ、残酷さ、そして新たな意味を見いだす。
おっと、フェリシティ・ジョーンズも出演していたな、気付いていなかった。思い出してほしいが、彼女のオスカー2度のノミネートは『博士と彼女のセオリー』(The Theory of Everything)の主演女優賞と『ザ・ブルータリスト』(Brutalist)の助演女優賞である。彼女はまた、新時代の『スター・ウォーズ』(Star Wars)作品でもおそらく最高の出来とされる『ローグ・ワン』(Rogue One)の主演でもあった。
一方のエドガートンは、『ザ・ギフト』(The Gift)から『ブラック・スキャンダル』(Black Mass)、『華麗なるギャツビー』(The Great Gatsby)、『ゼロ・ダーク・サーティ』(Zero Dark Thirty)まで、いくつもの作品で見覚えがあるはずだ。彼は『スター・ウォーズ』にも出演しており、前日譚三部作で若きオーウェン・ラーズを演じ、その役をドラマ『オビ=ワン・ケノービ』(Obi-Wan Kenobi)でも再演した。私が彼を最初に見たのは、たしか2011年のMMA映画『ウォーリアー』(Warrior)だったと思う。
『トレイン・ドリームズ』(Train Dreams)は現在、ネットフリックスのトップ10で第5位に位置し、6月初旬から同リストに居座っている『KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ』(KPop Demon Hunters)を追い抜いた。批評家の評価がここまで高いことを踏まえると、作品そのものに加え、エドガートンやジョーンズがオスカー争いに絡む可能性も十分にあるといえるだろう。明白な有力候補とされる『ワン・バトル・アフター・アナザー』(One Battle After Another)(94%)、『罪人たち(Sinners)』(97%)、『ハムネット』(Hamnet)(88%)、『ブゴニア』(Bugonia)(87%)などのスコアは、同等かそれ以下だ。ネットフリックス作品であることも、初期ほど不利にはならないかもしれない。
同社はこれまでにオスカーで通算73件のノミネーションを得ており、昨年の『エミリア・ペレス』(Emilia Perez)だけで13部門にノミネートされた。配信プラットフォームが作品賞を制した前例もあり、2021年にはApple TVの『コーダ あいのうた』(CODA)が受賞している。
というわけで、『トレイン・ドリームズ』は見逃せない1本のようだ。上映時間は1時間43分しかない。今すぐチェックする価値がある作品だ。



