江口が不動産業界に目をつけた背景には、自身の実体験がある。新卒入社したリクルートではSUUMOの広告企画営業に従事。街の不動産を回るなかで、仲介業者のアナログで非効率な労働環境を目の当たりにした。
「今でもよく覚えているのは、私自身が26歳で不動産を購入したときのこと。夜中11時に担当者が『ハンコをもらい忘れた』といって家まで訪れてきた。もっと生産性や待遇をよくできるのではないかと感じました」。米国に目を向けると、エージェントが個人で活動し、高い年収を実現しているケースも多いことがわかった。日本での商機を見出し、19年にTERASSを創業した。
順調に事業を成長させてきた江口だが、競合も出てきている。国内では、TERASSを上回る仲介手数料の分配率を提示する企業が出てきているほか、25年7月には、世界で約8万人のエージェントを擁するeXpリアルティが、日本市場進出を発表した。しかし江口は意に介さない。
「エージェントへの分配率が高いか低いかよりも、多くの成約が着実に生まれる仕組みが整っていることに魅力を感じてTERASSを選んでくれる人が多いと感じています。日本の商慣習などを踏まえたプロダクトやオペレーションを磨き続けてきたことも、差別化になります」
今後は投資用不動産の領域にも注力する。それに向け、10月に中高層木造建築技術に強みを持つ湘南乃工務店の全株式を取得。エージェントが、投資用物件に関心をもつ顧客に土地選びから建築までをワンストップで提案できる体制を構築した。居住用、投資用の両面を抑え、さらなる事業成長に挑む。
江口亮介◎慶應義塾大学経済学部卒。リクルートでSUUMO営業・企画、マッキンゼー・アンド・カンパニーで経営コンサルティングを経験し、2019年4月にTERASSを創業。一般社団法人不動産テック協会理事。


