見返りと現実が一致しない場合
昇進は見返りとセットになっていることが多いが、金銭的な報酬であっても感情的・心理的コストを消し去ることはない。ささやかな昇給では増えた責務の負担を相殺するには十分だとは感じられないかもしれない。昇給幅が大きくてもワークライフバランスが悪化する場合、さほど魅力的に映らない可能性がある。
評価の問題もある。多くの従業員は、職位が高くなったからといって以前よりも尊敬されるわけではないことに気づく。かつては同じ職位だった人から指示を受けることに抵抗を感じる同僚もいる。また、昇進がふさわしいかどうか疑問に思う人もいる。職位アップを意図していたものが実際には人間関係を気まずいものにすることもある。
そして、追い詰められる恐怖もある。昇進を辞退することはキャリアの妨害のように感じることがある。昇進を受け入れた後に苦労することは、世間的に失敗したように感じられる。いずれにせよ、従業員は閉塞感を感じる。成長の機会としてみなされているものが選択肢を狭めるものに感じられる。
リーダーにできること
昇進を罰のように感じる必要はない。リーダーは昇進に対してより思慮深いアプローチをとることでリスクを減らすことができる。
重要なステップの1つは思い込みがないかチェックすることだ。現在の職務で素晴らしい成果を収めているからといって、その人が次の職務を望んでいるとは限らない。どのような成長に価値を置いているのかを尋ねることで尊敬の念を示すことになり、その人が求めてもいない道を強制することを回避できる。結局のところ、誰もが肩書きで成功を測るわけではない。
もう1つのステップは、トレーニングとサポートを提供することだ。貢献している従業員の1人だった人がマネジャーになるには新しいスキルが必要だ。リーダーシップやコーチング、対立解決は誰もが自然に身に付けられるものではない。リソースを提供することで、厳しい試練ではなく成長を実感できるような移行をサポートできる。
リーダーはまた、意味にも留意すべきだ。昇進によってその人が好きな仕事から引き離されるのであれば、その仕事とのつながりを保つ方法を見つけることが重要だ。技術的な問題を解決したり、アイデア出しをしたりすることにまだ時間を費やすことができるマネジャーは、新しい職務を罰のように感じる可能性がはるかに低くなる。
最後に、組織は昇進の定義を広げるべきだ。成長とは必ずしも高い職位を意味するとは限らない。より深い専門性やスキルの幅を広げる他部門などへの移動、あるいは管理せずに指導する機会などを意味することもある。キャリアパスが柔軟であれば、昇進は罠ではなく選択肢の意味合いが強まる。
結局のところ、昇進の真の目的は、会社の優秀な労働者を好きな仕事から引き離すことで報いることではない。それは、その人が最初に価値を見出した意義のようなものを失うことなく成長し続けられるような状況を作り出すことだ。


