極端なエネルギー政策、巨大な福祉制度、労働倫理の崩壊で、ドイツ経済は混乱している。米フォーブス編集主幹のスティーブ・フォーブスは、同国のフリードリヒ・メルツ首相はルートビヒ・エアハルト元首相に学ぶ必要があると指摘する──。
かつて財務相も務めたドイツの故ルートビヒ・エアハルト元首相は、現在の危険な景気低迷から奇跡的な回復を遂げる方法を示している。
ドイツでは現在、極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が第2の勢力として台頭しており、不吉な状態にある。同政党は、資本主義、米国、北大西洋条約機構(NATO)、移民に反対する一方で、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領に賛同し、極端なナショナリズムを掲げる。2度の世界大戦の歴史を踏まえると、同政党がドイツで権力を掌握することは明らかに大きな懸念材料だ。
ドイツは混乱に陥っている。原子力発電所を閉鎖し、化石燃料との闘いを繰り広げ、高価で信頼性の低い風力発電や太陽光発電に全面的に乗り出すことで光熱費が高騰し、自らの手足を縛りつけている。同国は意図的にロシア産天然ガス輸入に大きく依存する体制を築いたのだ。
経済はほぼ行き詰まっている。ドイツの誇りだった製造業は競争力を失っている。かつては優れていた労働倫理もどこかへ行ってしまった。同国の過剰に手厚い福祉制度は、もはや持続不可能になりつつある。国民は次々と大量に押し寄せる移民の波に嫌悪感を抱いている。
今年5月に就任したフリードリヒ・メルツ首相は、この恐ろしい政治勢力を撃退し、経済を再び活性化させるためには大きな変化が必要であることを認識している。勢力を増すAfDを政権から締め出したいという意向により、メルツ首相率いる中道右派の「キリスト教民主同盟(CDU)」は、脳死状態の中道左派「社会民主党(SPD)」との連立を余儀なくされた。
メルツ首相は、切実に必要とされている社会基盤整備と、ロシアのプーチン大統領の帝国主義的野心を考えれば最も歓迎すべきことであるドイツ軍の大幅な増強のための巨額支出計画を推し進めている。同首相は政治的に困難な社会福祉と年金制度の改革も進めている。そのほか、小規模で段階的な法人税減税と、ドイツの悪名高い行政上の煩雑な手続きの削減にも取り組んでいる。



