「弊社のサービスの利用者の多くから、Surface Pro を販売して欲しいとの声が上がっていた」(カーク・シェル。デル顧客ソリューションズ・マネージャー)
「今回の提携は、PC業界ではたとえ競合関係であっても、補完的な関係を持つことが可能であることを示した」と、ムーア・インサイツ・ストラテジー社のパトリック・ムーアヘッド社長兼主席アナリストは述べる。
「これは3年前なら考えられもしなかった事態だ。デルがクリエイティブな企業に進化していることの現れだ」
デルはSurface Proを北米市場で今年10月に販売開始。他地域でも2016年初めに売り出したいとしている。
Surface はマイクロソフトにとって想定外のヒット商品となった。ツー・イン・ワンと呼ばれる仕様で、キーボードの着脱で、ラップトップとタブレット両方の体験ができる。同社では7月の四半期発表会見でSurface の売り上げが前年比117%増の8億8800万台となったことを明らかにした。年間売り上げは36億ドル(約4320億円)に達した。
マイクロソフトのSurface部門のブライアン・ホールGMは、今回の提携により「自社で単独で売るより受注販売が容易になった」としている。
「世界中に従業員を擁するグローバル企業に製品を提供する場合は、強力なデリバリー能力を求められる。それが、弊社単独では出来なかったことだ」とホール氏は語る。「こうした顧客向けに、我々だけでサポートをしたのでは売り上げに期待できない」
マイクロソフトは、ハードウェア部門を大幅に縮小した。特に縮小したのは携帯電話事業だ。今年7月、同社では携帯電話企業のノキア買収に関連して76億ドルの評価損を計上し7800人を削減すると発表した。
しかし、今回のデルやHPとの提携は、同社の他部門が直面している深刻な状況を見せつけている。これまでのSurface は、新しいPC体験として他のPCメーカーにデモンストレーションする手立てであったが、今や他企業へのビジネス・チャンスとなっているのだ。
「ハードウェア・メーカーとしてのマイクロソフトに厳しさが増している」とムーアヘッド氏は分析する。「Surfaceプロジェクトを始動した際の『他のOEMの手本に』という理念から大きくかけ離れてしまった。ハードウェアはマイクロソフトの中核事業であり、社としても真剣に取り組んできたが、売り上げ拡大を狙うには社内の体制が不十分なのだ」
PC市場ではあらゆる策が打たれているが、アナリスト企業が発表した最近の数字を見ると、ウィンドウズ10のリリースも効果がなく、マイクロソフトの売上の減少は今年末まで続きそうだ。
7月に発表された第二四半期の業績はガートナーの分析では、前年比で9.5%減だった。アナリストらは、PC市場が安定するのは2016年になると予測している。