彼らがまずやったのは、人脈を広げることだ。異なる分野に属する多くの人と話をし、自分ができそうなことは何かを新たに把握した。また、リクルーターに相談し、自分の移行先として適しているであろう分野や職務を見極めた。その後、異なる組織での新たな職務で、自分が望むような変化を実現できるかどうかを判断するために、面接に挑戦し始めた。
筆者の元クライアントは、そうやってリサーチと吟味を繰り返したのち、企業幹部から転じて、自分が好きな分野のコンサルタントになった。そうやって、数十年もの経験を生かすだけでなく、より大きな充実感と影響力を行使できる日々を手に入れた。
恐怖を感じるのは自然なことだ。そして、「勇気とともに行動すること」は、恐怖心を消すことではない。それは、恐怖を認め、現実的な視点でそれを評価し、不安があっても新しい方法で前進することなのだ。
3. やりたくないことではなく、やりたいことに改めて向き合う
キャリアに大きな不満を覚えると、人はどうしても、自分が望んでいないことへと目を向け(時には執拗に)、それとぶつかり合うためにエネルギーを費やしがちだ。ついつい「これ以上、この仕事を続けることはできない」とか、「このキャリアパスを選んだのは大きな間違いだった」というネガティブな考えが頭をよぎってしまうかもしれない。
しかし、そうやって抗ったところで、自分の思考がクリアになることや、前進するための力が湧いてくることはない。そして、チャンスを切り開くためではなく、チャンスを阻むためのエネルギーとして働いてしまうことになる。
それよりも、自分がやりたいことに注目し、意識的にそちらへとエネルギーを注ぐようにすべきだ。
そこで、自らにこう問いかけてみよう:
・この先1年間で、自分はどんな類いの影響を及ぼしたいのか。
・自分は次にどんな存在になりたいのか。
・自分の仕事や生活に、どのような感情を抱きたいのか。
・好きなことを仕事にしている知り合いはいるか。その人から何を学べるか。
・もっとやりがいのある仕事へと少しでも近づくために、どうやってスキルと能力を磨けばいいか。
これらを自問自答したら、次は、各質問への答えについて模索してみる番だ。オンラインで調べたり、信頼や憧れを寄せる人に相談したり、自分の目標に合致したコミュニティへの参加を検討したりするといい。上司に相談して、中心的な業務を変えられるかどうか検討するのも一つの手だ(ただし、そうした相談を持ちかけても問題ない上司の場合に限る)。
小さなことで構わない。「再び夢を見ること」を自分に許そう。ビジョンを描くことは、真に新しい再生のきっかけになることが多い。現在のキャリアを完全に手放すのではなく、変わりつつある自分の目的と強みを、現在のキャリアに取り入れる方法を見つけることが大事なのだ。
例えば、財務部のシニアマネージャーだったあるクライアントは、より大きな社会的責任を伴ったプロジェクトに力を入れたい、という自分の気持ちに気付いた。そして、そうした興味関心を、現在の業務に少しずつ組み入れる方法を見つけて、キャリアを大幅に変えることなく働くことの意義を取り戻した。


