1. 「大きな変化」の真の意味を再定義する
ベテランの多くは、状況を変えるためには、仕事を辞めたり、大学などに戻って学んだり、新しいキャリアをゼロから築いたりしなければならないと思い込んでいる。しかし、そうした思い込みはたいてい、自分を身動きできない状態に陥らせてしまう。
「大きな変化」と言っても、実際には、必ずしも抜本的な変化を意味するわけではない。ずっと小さなことであっても、戦略的に取り入れれば、十分な変化につながる場合がある。
現行の仕事内容を再編成し、もっとやる気が出るような要素を盛り込むことも、有意義な一手となるかもしれない。例えば、別のチームや部門に移動したり、好きな業務により集中できるよう、職務内容を見直せないか交渉したり、自分の本来の強みや興味関心、価値観と合致するような働き方に改めたりすることが考えられる。
そのためにまずは、自分自身に次のように問いかけてみよう:
・現在の仕事で、エネルギーを最も消耗する業務は何か。逆に、気持ちが少しでも明るくなる業務は何か。
・自分が楽しめる業務を今より10%増やし、エネルギーを消耗する業務を今より10%減らしたらどうだろうか。そのためには、どこから手をつければいいか。
・仕事や分野を変えなくても、尊敬できる同僚とともに、より楽しくやりがいを感じながら働ける方向へとバランスを変えていくために、今日からできることは何か。
ほんの少しの軌道修正であっても、それを繰り返せば、ぐっと弾みがついていく。筆者のクライアントだった、マーケティングを専門とするベテランの企業幹部を例に挙げよう。彼女は、業務の一部を、新入社員の指導や、ぜひともやりたいと思っていた地域貢献型の革新的な新プロジェクトの指揮に充てるようにした。その結果、仕事を辞めることなく、数カ月以内に仕事への満足度が飛躍的に上昇した。
2. 行動を封じる「恐怖心」に対処する
中堅どころの多くにとって、足かせになるのは、チャンスの少なさではなく、恐怖心だ。経済的な安定を失う恐怖、「年を取り過ぎている」とみなされる恐怖、変化のタイミングを逃してしまったという恐怖だ。恐怖心を抱くのは実に人間的なことではあるが、その感情に従って決断を下したり、行動を諦めたりしてはならない。
まずは、「自らのもつ可能性」について、自分自身にどのようなストーリーを語り聞かせているのかを明らかにしよう。それから、「そのストーリーは事実なのか。それとも、恐怖心から生まれたストーリーなのか」と自問自答しよう。
人は得てして、「起こり得ること」と「起こること」を混同する。そして、そのせいで前に進めなくなっている。
筆者が担当してきた50代のプロフェッショナルの多くが、新しい道へと踏み出した。そしてその大半は、それまで懸命に築いてきたキャリアを丸ごと手放すのではなく、積み重ねてきたことにおける最高の要素を生かし、それを足場にして新しいキャリアをつくり上げていった。


