時価総額1400億ドルの企業、ARMホールディングス(NASDAQ:ARM)をご存知だろうか? エヌビディアやアップルほど有名ではないが、アップルが設計するチップの100%と、エヌビディアの主力AI超大型チップに搭載されるカスタムCPUの基本設計図(コアアーキテクチャ)を支配している企業だ。
以下の4行の計算で、この企業がなぜAIバリュエーションバブルの代表例なのかがわかる。
・時価総額1400億ドル:前会計年度の売上高は40億ドル
・2025年会計年度のGAAP営業利益は約8億800万ドル、純利益は約6億5300万ドル
・つまり株価は利益の200倍以上
・参考までに、エヌビディアは約50倍、グーグル、マイクロソフト、アマゾンはすべて30倍未満
これは異常だ。では市場は実際にARMに何を期待しているのだろうか?
非現実的な期待
今日の利益の200倍以上という株価を正当化するために、市場は暗黙のうちにARMに対して積極的な「完璧なシナリオ」を織り込んでいる。同社は今後5年間で、取引量と収益性の両方を大幅かつ同時に増加させなければならない
・売上高:3倍以上増加して約125億ドルに
・純利益率:2倍以上増加してGAAPベースで約40%に
これが求められる結果だ。しかし、ビジネスの構造的な現実がこれを極めて困難にしている理由を説明しよう。
構造的欠陥:利益率は40%に達し得ない
GAAP純利益率を約40%まで改善するという要件は大きな障壁だ。同社の2025年会計年度の利益率は約16%、過去12カ月では19%程度だった。
ARMは巨大企業と競争しなければならない人材集約型のエンジニアリング企業だ。研究開発費は売上高の52%という驚異的な水準で、NVIDIAの9%と比較にならない。高額な人材コストは主にストックベースド・コンペンセーション(SBC)で支払われている。GAAP利益率40%を達成するには、このSBC費用を排除する必要があるが、それはすぐに人材流出を引き起こすだろう。
また、売上高が3倍になるという期待も理にかなっていない。スマートフォンとPC/ノートパソコンの成長は頭打ちであり(アップルは定額料金を支払い、ロイヤリティ増加には30%以上のユーザーがProバージョンを購入する必要がある)売上成長の負担はすべてデータセンターにかかっている。
そして、データセンターというチャンスは誤解されている可能性が高い。



