ハリウッドには現在、「劇場に客を呼べるAリスト」とは異なる、新たな勝ち組が存在する。それが、ストリーミング市場を主戦場とする「Aマイナスリスト」だ。そしてその頂点にあるとみられる映画スターが、マーク・ウォールバーグ(54)である。
今やウォールバーグは、ネットフリックス、アマゾン、アップルといっや動画配信大手3社から引く手あまたの存在だ。報酬は1作あたり2000万ドル(約31億円。1ドル=157円換算)を超える。劇場公開が減少する中、巨大テック企業の豊富な資金はどこへ流れているのか。アダム・サンドラーやケビン・ハートなどと並ぶ「Aマイナスリスト」の象徴として、新たなスタイルを構築したスターのブランド力と収益モデルの変容をレポートする。
劇場公開作が激減する中、知名度と安心感を武器に配信プラットフォームに移行
ロバート・ダウニー・ジュニアの代役を務められる俳優はごくわずかだ。しかし、アマゾンの幹部は2023年、オスカー俳優のダウニーがマーベル作品に復帰するために同社の作品を降板したため、その“ごくわずか”な俳優のリストを作らざるを得なかった。
製作陣が求めたのは、ユーモアのセンスやアクションスターとしての資質、そして何より“集客力”だった。最終的に彼らが行き着いたのは、この5年間で多くのストリーミング関係者が同じ結論として選んだマーク・ウォールバーグの起用だった。
「この作品は最初からスターを置く前提だった」と語るのは、アマゾンMGMスタジオで映画部門トップを務めるジュリー・ラパポートだ。「マークのようなスターには、観客に安心感を与える“見慣れた顔”という強みがある。人々は、劇場公開作品やストリーミング作品を問わず、彼が出る作品に興味を持ってくれる」。
ウォールバーグは、ここ数年、まさにストリーミングに出まくっている。10月にはプライムビデオで『プレイ・ダーティ』が配信され、Apple TVでも『ファミリー・プラン2』が配信中だ。これで2020年以降に彼が出演したストリーミング映画は7本、配信先はネットフリックスやParamount+を含めて4サービスに及ぶ。かつてのハリウッドでは、「配信直行」作品への出演は、俳優の人気低迷の象徴だった。しかし、ウォールバーグはストリーミング作品から多額の報酬を得ている。フォーブスの推計で彼は各作品で2000万〜2500万ドル(約31億〜39億円)というAクラスの報酬を得ており、これは映画業界が新たな局面に入ったことを示している。
映画スターの評価基準は長らく「どれだけの興行収入を上げられるか」だった。しかし、劇場公開作品が減少し、有名俳優の名前だけでは成功が約束されない今(その事例としてドウェイン・ジョンソンの『ザ・スマッシング・マシーン』、シドニー・スウィーニーの『クリスティ』、グレン・パウエルの『ランニング・マン』などが挙げられる)、最上位のスターに届かない多くの俳優が、配信サービスに活路を見いだしている。
その理由は明確だ。彼らは“ひと目でわかる顔”を武器に、プラットフォーム上の移り気な視聴者を引きつけることができ、その見返りとして巨額の報酬を約束されている。


