中国のAI開発阻止を図る米政府に対し、エヌビディアのフアンCEOは市場閉鎖を懸念し緩和を要望
米国政府が中国のAI開発を抑え込もうとする中で、エヌビディア製チップの対中販売を制限する政策は、最重要課題の1つになっている。トランプ大統領は4月、対中輸出規制に対応するため中国向けに作られたエヌビディアのH20チップでさえ、輸出を止める措置を取った。
これに対し、大統領との関係を深めてきたエヌビディアのジェンスン・フアンCEOは、自社チップへの規制緩和を働きかけた。フアンCEOの働きかけは一定の成果を上げ、トランプは8月に、性能を抑えたタイプのチップの輸出を再開することを、売上の15%を課税する条件で認めた。
フアンCEOは、輸出規制は中国企業の“創意工夫”を促すだけで、自社にとって巨大市場を事実上閉ざしてしまうと主張し、トランプと中国の習近平国家主席の協議で状況が改善することに期待を示していた。しかし最近、トランプはCBSの番組「60ミニッツ」で、中国ビジネス拡大を望むフアンCEOの意向があっても、高性能チップの対中販売は認めない方針だと述べていた。
中国がAIで軍事力と監視体制を強化、米司法省は大量破壊兵器への応用を警戒
今回の起訴状で米司法省は、中国政府が軍の近代化や兵器設計にAIを活用しており、その用途には「大量破壊兵器」や「高度なAI監視ツール」も含まれるとした。
「エヌビディアのクラウドパートナー」を自称、リンクトインに虚偽の経歴を記載していた主犯格
BitworksCEOのレイモンドは、リンクトインのページ上で「エヌビディアのクラウドパートナー」を名乗り、サーバーやチップを販売し、AIスタートアップ、国立研究所、映画・ゲーム向けのVFX制作会社などと取引があると記している。またAIクラウド企業Corvexの最高技術責任者(CTO)を務めていると記載している。しかし、Corvexに確認したところ、レイモンドはまだ正式に入社しておらず、提示していたオファーは撤回されたという。
輸出規制を回避するため第三国を経由、不動産会社を隠れ蓑にした資金ルート
レイモンドの共犯者のホン・ニン・ホー、チャン・リ、ジン・チェンの3人は、エヌビディアのGPUを求める中国企業を探し出し、レイモンドからチップを入手したとされる。レイモンドはホーと協力して、貨物の中身や受取先を隠すために虚偽の情報を発送書類に記載した疑いがある。
司法省によれば、4人は第三国を経由して輸出規制を回避する方法を話し合っていた。またホー、リ、チェンは、マレーシアやタイの匿名の協力者と連携し、エヌビディア製品を中国に送り込む手口を使っていたとされる。起訴状によると、中国企業(社名は明かされていない)からの支払いは、フロリダ州の不動産業者を装った会社を通すか、レイモンドの会社口座に直接送金する形で処理されていた。
司法省によれば、8月にも中国籍の2人が同様のスキームで起訴された。彼らは、シンガポールやマレーシアを経由して北京に製品を運び込んでいた疑いがあり、違法輸出による収益は3000万ドル(約47億円)に達していた可能性があるという。


