アジア

2025.11.27 14:15

香港マンション大火災、可燃の竹足場と絶滅危惧職『スパイダー』に密着

進化も━━バイオマテリアルとしての「竹」

こういった中、香港では、伝統を守るだけではなく、現代の課題に合わせて進化させる動きが進んでいる。竹足場の使用が減っても、文化財の修復や短期イベントの会場など、竹ならではの柔軟性が活きるニッチ分野で価値を再定義する取り組みだ。同時に、竹の軽さ・柔らかさ・低コストといった特性を生かし、バイオマテリアルとしての新しい可能性にも注目が集まる。

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2025年5月からイタリアで開催されている建築の国際展覧会「第19回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展」では、香港の建設事務所と熟練した足場職人が、歴史的建物を竹で包み込むインスタレーションを出展。ここでは竹を現代建築の表現手段として紹介し、香港の職人技が世界の建築家と対等に協力し国際展開できる例を示した。

香港城市大学発のスタートアップ「Super Bamboo」は、竹を鋼材やチタン合金を超える強度の新素材に変換する技術を開発。建築材料や工業製品など幅広い分野での活用が期待される環境に優しい次世代素材として注目を集めている。

2025年5月には、夏限定のイベントとして竹を楽しみながら学べる体験型のイベント「BAMBOOSCAPE」が登場。ここでは竹編みのワークショップや体験型の展示が行われ、竹をアート・遊び・観光へと広げるこうした取り組みは、近年増えてきている。

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さらに、アジアの現代アート拠点とも言われる美術館のM+では、床・壁・天井にまで竹が使われており、単なる素材ではなく、竹自体を建物の見どころとして生かしている。

こうした動きは、竹足場の伝統が過去の遺産ではなく、時代のニーズに合わせて姿を変えながら生き続ける文化資源であることを教えてくれる。「伝統か効率か」のどちらか一つを選ぶのではなくハイブリッドとしたり、「香港らしさ」のブランドを再定義するチャンスとなるかもしれない。

ネオン看板が香港の街から消えつつあるのと同じように、香港の象徴だった風景が少しずつ姿を変え始めている。安全性や労働環境という現実を前に、竹足場が鉄筋に置き換わる流れは避けられないだろう。

だが、竹そのものが消えるわけではない。香港では今、その伝統を別の角度から生かす試みが続々と生まれている。竹足場の変化は、香港が自分たちの文化をどのように残し、どのように更新していくのか。その判断がいま問われている。

ベック知子(べっく・ともこ)◎香港在住のインタビューライター。東京外国語大学外国語学部スペイン語学科卒業。民放キー局で15年以上にわたり、アメリカ政治や国際情勢の取材に携わる。2022年からはアフリカ・タンザニアに拠点を移し、フリーランスとして独立。現在は香港を拠点に、グローバルに活躍する日本人の姿や、現地発のレポートを国内外のメディアに届けている。著書に『40代からの人生が楽しくなる タンザニアのすごい思考法(Kindle版)』がある。

取材・構成=ベック知子 編集=石井節子

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