アート

2025.11.29 14:00

カルティエ現代美術財団が新拠点で見せる「空間・光・思考」の融合

パリ・パレロワイヤル広場へ移転したカルティエ現代美術財団(Photo by Luc Castel/Getty Images)

初の展覧会を構成する4つの「テーマと章」

19世紀の建築物の精神をよみがえらせた「エクスポジション ジェネラル」展のタイトルは、当時は百貨店だったこの建物で、世界中から集められた現代的なモノや製品を紹介する万国博覧会の開幕を前に催された展覧会のタイトルでもある。カルティエ財団のキュレーター、グラツィア・クアローニとベアトリス・グルニエはその「発見の精神」を、21世紀にふさわしい形に再解釈した。

advertisement

開催中の展覧会は、現代のアイデアを集めた百貨店のようでもある。陶磁器と写真、アマゾンの先住民の芸術作品と西洋の概念主義、織物とビデオ・インスタレーションが、並び合う形で披露されている。クアローニはこの展覧会のキュレーションについて、陶芸作品や漫画、織物など、かつてはそれほど一般的ではなかった分野の作品も一緒に展示した「民主的」なアプローチに基づく、急進的なものだと説明している。

この展覧会は「建築、現実世界、技術、素材」という4つのテーマに基づいて構成されている。そのほか芸術と科学の関連性も、中心的な要素に含まれている。ただ、これらの異なるカテゴリーは互いに、部分的に融合している。そうしたキュレーションによって、この展覧会は異なる文化やメディウム(素材・技法)、芸術分野の間にある時代遅れのヒエラルキーを排除している。

数十年にわたり、異文化間の協力に基づきコレクションを築いてきたカルティエ財団は、この展覧会によってこれまで目指してきた「多元性」を実現したようにみえる。2022年にカルティエ財団の理事に就任したクリス・デルコンは、この展覧会において何より重要なのは、「展覧会のプログラムでも、所蔵品の購入プログラムでもない」と語る。

advertisement
オープニングに出席したクリス・デルコン(Photo by Luc Castel/Getty Images)
オープニングに出席したクリス・デルコン(Photo by Luc Castel/Getty Images)

「展覧会のプログラムは、コレクションと密接に結びついています。40年を経たいま、コレクションには『フィル・ルージュ(共通したテーマ)』、つまり非常に強いつながりを見て取ることができます」

さらに、デルコンによるとコレクションは4つの章にわけられている。まず、デザイナーと建築家が生み出す「都市と都市性」、そして、遠い国への旅も含む「自然という舞台全体」、さらに「モノ作り」と、展覧会とコレクションを結び付ける「フィル・ルージュ」だ。

「(工芸品を指すドイツ語の)クンスタントヴェルクという言葉は嫌いなのですが、最も重要なのは、モノを作るということです」と語るデルコンは、その一例として、コロンビアのテキスタイル作家、オルガ・デ・アマラルの作品を挙げている。また、4つ目の「フィル・ルージュ」については、「アーティストだけでなく、思想家や哲学者、建築家たちの対話を生み出すものにもなっている」と説明する。

次ページ > 建物は作品鑑賞のための「ツール」

編集=木内涼子

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事