米ウェイモが最近、高速道路やサンフランシスコ半島の大部分へサービス範囲を拡大したことで、「自分の街ではいつロボタクシー(自動運転タクシー)が使えるようになるのか」という声が上がり始めた。同社は複数の都市でサービス展開の意向をすでに示している。
全米へ広がる導入計画、競合の追随と依然として残る「空白」
ウェイモはこのほどマイアミで無人運転(監督者なし)のテスト運行を始め、今後数週間でダラス、ヒューストン、サンアントニオ、オーランドでも同様のオペレーションを開始する計画だ。一般向けの配車サービスは来年から提供する予定となっている。また、ワシントン、サンディエゴ、デトロイト、ナッシュビル、ラスベガスでも計画を明らかにしており、現在はサンフランシスコ半島全域に加え、フェニックス、ロサンゼルス、オースティン、アトランタでサービスを実施している。ニューヨーク、ロンドン、東京など複数の都市でもテスト走行を進めている。
Zoox(ズークス)もラスベガスで行っている少数の停留所のみのサービスに加えて、サンフランシスコでごく限定的ながら一般乗客向けサービスを開始した。テスラはまだ本格的なロボタクシーを持っていないが、近く複数を提供すると繰り返し強調しており、イーロン・マスクは、「一度動き始めればウェイモ以上のスピードで拡大する」と主張している。中国ではバイドゥがウェイモに匹敵する数の配車をこなしており、国内の主要3社が多数の都市をカバーしているほか、アラブ首長国連邦(UAE)や欧州での展開計画もある。
しかし、サンフランシスコのベイエリアでさえ、サービスが提供されていない地域はまだ多い。サンノゼの大部分、イーストベイとノースベイ全域、サンタクルーズやパシフィカ、丘陵地帯の高級住宅地などがその代表例だ。ロサンゼルスも未提供エリアがまだ多い。
では、ウェイモをはじめとするロボタクシー各社は、新たな都市への進出をどう判断しているのだろう。また、どの要因が彼らの展開を制約し、あなたの住む地域でサービスが始まらない理由になっているのだろう?
拡大を阻む「巨額投資」と「安全証明」という2つの高い壁
2009年設立のウーバーは、16年が経った現在、米国の主要都市のほとんどで利用可能になっているが、小規模な町の多くでは今もサービスが提供されていない。ウーバーが新たな町に進出する上で必要なのは、ローカライズや地域との調整、ドライバー募集を担う2人ほどのチームを派遣することのみで、資本投下はほとんど必要ない。
これに対して、ロボタクシーのサービス拡大には、多額の資金と労働力が不可欠だ。しかし、ウェイモやグーグルを傘下に持つアルファベットのような世界有数の資本力を持つ企業であっても、短期間に資金を大量投入できるわけではない。車両や拠点の製造・整備から、膨大なインフラ整備まで、多くの作業が必要になる。この点については、以前の記事でも詳しく説明した。
どの地域であっても必要になるのは、その地域特有の状況をすべて処理できるようにすることと、その準備が整ったことを証明することだ。仮に「ほぼどんな道路でも走れる」汎用的な車両を用意したとしても、ロボタクシー企業は、その車を1度も走らせたことのない道路で、いきなり一般客を乗せたりはしない。
通常は想定外の出来事は起きないが、ときに予期せぬ問題が起き、それが深刻な事態を招く恐れがある。こうした検証には時間も資金もかかり、経営陣の人的リソースも必要となる。この経営リソースの調整や、資金を割り当てるためのマネジメントの手間が、大きなボトルネックになっている。
こうした制約から、新たな市場をどれだけ速く広げられるかには限界があるため、各社は最も理にかなった地域を優先して選ぶ。特定の地域を選ぶ理由には、収益性の高さや競争上の重要性、あるいは単純に進出しやすいなど、さまざまなものが挙げられる。



