AI

2025.11.30 13:00

言葉と画像を極めたAI、次は物理世界へ──ワールドモデルの開発に重心

ゴッホ『寝室』(パプリックドメイン)

元の『寝室』の画像をMarbleに入力して広い視野を生成したもの(Forbes Japan編集部)
元の『寝室』の画像をMarbleに入力して広い視野を生成したもの(Forbes Japan編集部 via Marble)
上の画像の「後ろ」を振り向いたときの画像(Forbes Japan編集部)
上の画像の「後ろ」を振り向いたときの画像(Forbes Japan編集部 via Marble)

この事例は、ワールドモデルが限定的なデータから構造的に首尾一貫した空間を生成できる一方で、より大規模で複雑な環境に対しては、細部の保持、論理的な物体永続性、精密な空間推論の維持に苦戦することを示している。

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ワールドモデリングの技術的課題と内在リスク

有効なワールドモデルの構築は、過去のAI分野よりも一層複雑な技術的課題である。物理空間をシミュレートするには、環境の次に起こり得るもっともらしい状態を予測する必要があり、それには膨大なデータポイントと、文脈的・因果的関係の理解が求められる。

より長い動画列で学習することは、文脈理解のためのデータを増やし得るが、基盤となる物理や空間的相互作用には、文法のような構造化された規則も、画像中の物体のピクセルのように測定しやすい単位も存在しない。実世界は曖昧さに満ち、物体や力の間にはしばしば非決定的で複雑な関係があり、これをコード化するのは難しい。さらに、ワールドモデルは記憶の問題を克服しなければならない。時間をまたいで行為とその結果を追跡し、首尾一貫したナビゲーションやタスク完遂を可能にする能力が必要だからだ。

技術的障害を越えて、ワールドモデルは固有のリスクももたらし得る。これらのシステムがより有能になるにつれ、物理ロボットや自律システムの制御といった実世界での適用には、厳格な安全性の検討が不可欠となる。

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主たる懸念は、AIエージェントが、現実と完全には一致しないかもしれないシミュレートされたワールドモデルに基づいて学習し、行動してしまう可能性にある。もしAIが、あらゆる行動について直接の人間の指示がなくとも、ある世界の中を移動し行動するよう訓練されている場合、物理や文脈に対する理解の欠陥が、現実世界で予期せぬ有害な結果を招き得る。したがって、今後の道筋には、深遠な技術課題の解決だけでなく、この強力な技術を安全かつ信頼できる形で展開するための枠組みの確立も含まれていなければならない。

forbes.com 原文

翻訳=酒匂寛

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