カルチャー

2025.11.21 08:15

なぜ日本の手しごとが世界を変えるのか─カルチャープレナー塚原龍雲が本出版

塚原龍雲(KASASAGI提供)

塚原龍雲(KASASAGI提供)

11月17日、起業家の塚原龍雲が、全国1000カ所以上の工房を巡った経験をもとにした書籍『なぜ日本の手仕事が世界を変えるのか』(集英社)を刊行した。

塚原は伝統工芸の技術を空間デザインや建築分野に応用するKASASAGIを創業した起業家で、Forbes JAPAN「CULTURE-PRENEURS 30 2024」に選出された一人だ。

カルチャープレナーとは、文化やクリエイティブ領域を起点に新たな価値を生む文化起業家のこと。塚原はその一人として、伝統工芸に用いられる自然素材や手仕事技術を建築・内装分野に応用する「KASASAGI STUDIO」を展開。日本各地で受け継がれる工芸技術に現代的な文脈を与える取り組みを続けている。

たとえば、富山県の伝統工芸・高岡銅器の技術を活用したプロジェクト。普通は「錆を抑える」ことが前提とされる銅だが、塚原はその逆で、“錆をあえて育てていく” という発想を取り入れ、壁面アートへと昇華させた。素材が月日とともに表情を変える“経年美化”をデザインとして組み込み、職人に新たな活躍の場を提供し、空間そのものに時間軸を宿らせる試みだ。

こうした独自のアプローチは職人の世界にも波及している。KASASAGIが工房と連携して行った空間への実装では、工芸品の単価が従来比で20倍以上に跳ね上がった事例も生まれた。単なる「伝統技術の販売」ではなく、素材のストーリーや哲学ごとに提案することで、新たな需要を掘り起こしている。

その背景には、伝統工芸市場の縮小や後継者不足などの構造課題がある。しかし塚原は、手仕事の魅力を「職人の顔が見える」「時間が刻まれる佇まい」といった生活文化として捉え直し、若い世代にも届く価値へとリフレームしようとしている。

出版された書籍では、Z世代として伝統工芸と向き合った原体験から、職人との対話、産地ごとに異なる美意識までが綴られている。工芸を単なるモノや技術ではなく、「未来の社会をかたちづくる価値観や姿勢」として読み解いているのが特徴だ。

“趣味や土産物”としての工芸とは異なる、新しい文化×ビジネスの姿。
手仕事が「未来の産業のヒント」になる可能性を探る一冊となりそうだ。

Forbes JAPAN編集部=文

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