アマゾン創業者のジェフ・ベゾスが、タンパク質をソフトウェアのように設計しようとするAIスタートアップ、「Profluent(プロフルーエント)」に1億600万ドル(約166億円。1ドル=157円換算)を投じた。既存の創薬は偶然の発見に頼る部分が大きいとされる中、Profluentは大規模言語モデルと同じ仕組みでタンパク質を生成し、新薬や農業向けの有用なタンパク質を狙って作る「プログラマブル・バイオロジー(Programmable Biology)」を掲げる。米国ではAIとバイオの融合が次の成長分野とみなされており、評価額10億ドル(約1570億円)に迫るこの案件は、その流れを象徴する一例といえる。
人間の言葉で指示すると、最適なタンパク質を作るための「DNAレシピ」を出力
アリ・マダニは、ChatGPTが登場する数年前の2020年の時点で、AIを生物学に対してどのようにプログラム可能にできるかを考え始めた。機械学習の科学者である彼は、当時セールスフォースに在籍しており、その年に同社は生成AIで新規タンパク質を設計するムーンショット型プロジェクト「ProGen」(プロジェン)を立ち上げた。「英語に使うのと同じアーキテクチャを、タンパク質のような生物の言語にも使えます」と彼はフォーブスに語った。
彼は2022年にセールスフォースを離れ、ワシントン大学で研究室を率いるアレクサンダー・ミースケと組み、その構想の実現に動いた。現在、カリフォルニア州エメリービルに拠点を置く彼のスタートアップ、ProfluentのAIモデルは、科学者がタンパク質に望む特性(安定性や製造のしやすさなど)を人間の言葉で説明すると、そのタンパク質を作るためのDNAの「レシピ」を出力できるようにしている。
カリフォルニア大学バークレー校で博士号を取得し、ProGenに関する『Nature Biotechnology』投稿論文の筆頭著者でもあるマダニは、タンパク質に焦点を当てることで画期的な新薬が生まれる可能性が開けると考えている。タンパク質は多くの既存薬の基盤となる低分子化合物よりもはるかに複雑な巨大分子だが、遺伝子治療のような新たな治療法を可能にする。また、農業分野でも、より強靭で持続可能な作物の創出につながることを期待している。
「生物学をプログラム可能にするという命題は、ブロックバスター薬(大ヒット薬)を生み出し、治療、診断、農業全体に解決策をもたらします──そして多額の資本を要します」とマダニは語った。



